すべてはあの花のために❽


 時刻は2時半過ぎ。
 いつもより少し遅い時間だ。ディスプレイには『アオイ』と出ている。


「ふあ~……。もしもし……?」

『あ。寝てた? ごめんなさい』

「ううん。寝そうだったから、起こしてくれてありがと」

『ふふ。そっか。よかった』

「……ちょっとさ、いつもの愚痴聞く前に」

『今日のことでしょ? わかってる』

「何があったの」

『お昼休みと体育館裏だよね』


 ……そっか。あの時も、アカネに行ってもらったけど遅かったんだっけ。すっかり体育館裏の方で上書きされて忘れてた。


『厳密に言えば、襲われた』

「厳密に言わなくても襲われたんでしょ」


 なんだ、厳密って。


『みんな知らないみたいだけど、昼休みは体育館裏よりも襲われたよ、本気で』

「――!! ……ちょっと、どういうこと」


 一気に目が覚めた。


『先に体育館裏の方からね』

「……わかった」


 それからアオイに聞いて、襲ってきたのは五十嵐組の奴らだったことがわかった。ハナ自身は知らないけれど、アオイが見せてもらった組の名簿の中に、同じ顔の奴らがいたらしい。
 今日は家の用事と、それを確かめるために一応名簿を確認していたから、電話を掛けてくるのが遅くなったみたいだ。


「……そっちも襲われてるじゃん」

『まだ軽いって』


 どういうことだよ。これよりも昼休みの方がヤバかったってことでしょ?


「名前と、顔の特徴教えて」

『写真撮っておいたから、電話終わったらアドレスに送っとく』

「データと履歴の消去」

『わかってるよ。バッチリしてる』


 だったら、取り敢えずはそいつらについて調べて、……脅す。決定。


「……ごめん。もう一つの方、教えて」

『苛々してる?』

「当たり前じゃん。マジキレそう」

『……ごめん』

「え? ……ああ違うよ。自分にね」

『え……?』

「ハナのところに、早く誰かを行かさなかったこと。すごい後悔してるんだ」

『……でもどうせ、一番に気づいてたんでしょ?』

「わかんないけどね」

『早く誰かを行かせばってことは、誰も気がついてなくて誰も動かなかった』

「…………」

『だから、気がついてくれるだけで嬉しい。……ありがとう、ヒナタ』

「……助けてやれなかったら、意味ないじゃん」

『じゃあ次頑張れ!』

「……ははっ。軽っ」

『ま、もし本当に何かあったら、わたしが削ってでも葵を助けるよ』

「でも、アオイはしたくないでしょ? だから、オレがなるべく見ておくよ」

『……うん。葵を、守ってあげようね』