すべてはあの花のために❽


 でもまた、その判断がハナを襲う。


「ねえ、何かあったの」


 そう聞いても「ん? 何が?」って返ってくるだけで、教えてはくれないんだなって思った。


「(そういえばアオイが、そういう学校には行ってたって。その時の体育祭は、まあ楽しめたって言ってた……)」


 そう思って声を掛けたら、少し楽しそうにその時のことを話してたからよかったと思ったけど、あっという間にその話は中断された。


「うん。タイヤ奪いの数が足りなくなってるんだって。だから予備のタイヤ取りに行ってくるよ」


 無線が入った。一人で行かせてしまった。
 ……行かせるんじゃなかったって。オレじゃなくても、誰かと一緒に行かせたら、あんな嫌な目に遭わなかったのにって。思ったところで、それがすでに遅いことに変わりはないんだけど。


「(……遅い)」


 場所を教えるだけならすぐ帰ってくるはずなのに。無線を鳴らしても応答がない。


「ん? どうした日向」

「アキくん……」

「どうしたのー? あれ。アオイちゃんがいない……」

「……さっき、業者から呼び出しがあって」

「一人で行かせたの、アンタ」

「……今、何度も無線で呼んでるんだけど」


 オレがそう言ったら、みんなが仕事をしながら無線を鳴らす。


「いや回線グチャグチャだから! 誰か一人で十分だよお!」

「っ、オウリ? ごめんけど、今すぐ手空けてくれない?」

「(……こくり)」


 何かあったのかもしれないと思って、オウリはキクに無理矢理仕事を押し付けてオレのところに来てくれた。


「体育館裏にいるはずだからさ、みんなが心配してるって。みんなで無線鳴らしてるのにって、会ったらあいつに言って?」

「……? (こくり)」


 オウリは大きく頷いて、走って行ってくれた。


「日向が気に病むことはない」

「アキくん……」


 そうは言われても、やっぱりどうしても思ってしまうんだ。
 一人で行かせなかったらって。無事でいてって。……ま、実際のところ、襲った人たちが酷い目に遭ったらしいけどね。

 オウリと二人で帰ってきてる姿は元気そうで、何もなかったならよかったと思った。司会の仕事をしながらほっとしていたオレは、アカネと交代して自分の競技に向かう。


「どうしたの。何かあったの」


 でも、あれだけ鳴らした無線に出られなかったってことは、何かはあったんだろう。入場門へ行く前に声を掛ける。


「うん。ヒナタくんごめんね」

「は? どういう意味?」

「君が大正解だったという意味です」

「――! ……ッ」


 競技の時間が迫っていたから、「後でちゃんと話して」とだけ言って駆けて行ったけど。


「(……っ、やっぱり行かせるんじゃなかった)」


 すごい後悔して、脱いだ体操着を思い切りチカに投げ付けた。


「――ぶほっ!? ……ぷはっ。な、なんだよ!」

「……っ」

「(ひーくん……)」

「……ヒナタ? どうした?」

「はああああー……」

「(……ぽんぽん)」


 オウリがオレの肩を叩く。……ほんとに落ち込んでる、今。


「……あいつか。なんかあったのかやっぱり」

「……うん。そう、みたい」

〈行ったらね
 なんかロープみたいなの
 あった〉


 オウリが地面にそう書いて教えてくれるけど。


「「縛られてたって、こと……?」」

〈わかんない〉


 一気に雰囲気が暗くなって、勢いもなくなり騎馬戦は大敗。


「負けちまったー……」

「(しゅん……)」


 二人はしょんぼりしてた。それもそのはずだ。ここで結構点数入るから、追いつかれそうになってる。……でもオレは、そんなことよりも。


「(あとで詳しく話すって言われても、集中できないし……)」


 そう思うと、勝手に眉間に皺が寄る。


「(……絶対問い質す)」


 ある意味違うことに火がついた。