すべてはあの花のために❽


 あのあと、まだ顔色がいまいち戻っていなかったハナを送ったけど……。


「じゃ、また明日生徒会で」

「うん! ありがとう! さようなら!」


 そう言って別れた。


「……またねは、もう言わないって言ってたもんね」


『会えないと怖いから』


 だからもう、ハナは次の約束はしてくれない。……ま、それも自分のせいか。


「(にしても……)」


 ふと、打ち合わせの時の嫌な視線を思い出す。


「(にしてもあの視線。もしかして西関係?)」


 その線が消えてないこともない。一番可能性がありそうなのはあの銀色だけど。


「(ちょっと気をつけておこう)」


 ハナに危害が加えられないよう、ちゃんと見ておいてやらないと。


 その日の夜から、毎日のようにアオイから電話が掛かってきた。


『……それでね。あのね……』

「うん。いいよ、ゆっくりで」


 電話をした履歴は消せば、このスマホの存在は明細書にも書かれないらしい。ほんと、海棠恐ろしや! って感じ。
 消すように頼んであるから、いつもアオイの気が済むまで話を聞いてあげてた。


『……あ。寝ないと葵が寝不足になっちゃう』

「うん。だったらまた明日、掛けておいで」

『……! うんっ。また明日ね。ヒナタ!』


 ハナのためを思っているアオイは、やっぱりやさしい子だなと思った。……ま、申し訳ないことにこの会話も録音してるんだけど。


「……アオイは、またねって言ってくれるのにね」


 ぼそっとそう呟いて寝るのが、オレの日課になった。



 体育祭前日。


「ねえアキくん。あいつ見てない?」


 ちょっと目を離したら、あいつがいなくなってることに気がついた。視線のことがあって、注意しておくように言ったのに。


「(……ばかハナ)」


 そう思ってたら無線に連絡が入った。好奇心に負けて行ったらあいつがコスプレしてて、若干引いた。


「(いや、似合いすぎてて引いたんだよ)」


 ちなみに。


「あ。もしもし警察ですか。今友達が変態に襲われてます。場所は――」

「ちょちょ! 待って待って! やめてえー……!」


 学校生活では、ハナをいじめて涙目にさせるのが日課になっていたりする。


「(にしても……)」


 受け身を取っていた手を若干庇ってるように見える。


「…………」


 でも、どうやらカナも気がついたみたいだったから、ここはあいつに任せることにした。
 あれだけ警戒心が強かったカナが、ここまでオレら以外にも心を開いてくれたのも嬉しかったし。