すべてはあの花のために❽


 そう言って、もう一つのスマホでボイスメモをしている最中の画面を見せる。


「ええ……!? 何してるの!? なんで……!?」

「いつかのため。保険だよ保険。アオイには言っておこうと思って」

「葵に嫌われる~……」

「そうなったら、嫌われるのはアオイじゃなくてオレの方だから」

「……それもそれで嫌だ」

「そう? ありがと。……でもさ、アオイは話してくれたけど、ハナって結構頑固でしょ?」

「うん。葵はめっちゃ頑固だよ。わたしなんか比べものにならないくらい」

「頑固親父かよ……」

「え?」

「あ、いや。……まあオレがさ、なんとかハナの口からアオイが言ってくれたようなことを話させようと思ってるんだけど、その前にハナが消えちゃったら意味ないでしょ? だから、一応その保険」

「………………」

「オレ捻くれてるから。こんなことしか思いつかないんだけど、絶対に悪用はしない。ハナが消えるんだったら、オレはハナのことをみんながもし嫌いになったとしてもこれを使って助けるよ。オレが、ハナを絶対に守ってあげる」

「……葵がヒナタを嫌いになりそうだったら、わたしがそれを止める」

「え? ありがたいけどなんで? どうやって?」

「わたしだとは言ってないんだけど、時々葵と話をするの」

「え」

「葵、時々独り言とか、一人で寸劇っぽいことしてない?」

「え。……あれってアオイと話してるの?」

「殆どわたしかな。あ、でも本当に一人でやってる時もあるけど」

「ハナ……」

「こんなに葵のために頑張ってくれようとしてるヒナタを、わたしがなんとしてでも嫌いになんてさせない」

「……言わないでよ? こんなことしてるってことは」

「言わないよ。そもそも絶対に嫌いになるわけないもん。みんな大事な友達だから」

「……そっか。それはよかった」

「……それじゃあ、そろそろ葵を起こさないと」

「うん。わかった」


 ふっとアオイが離れていった熱が、ちょっと寂しかった。
 アオイは横になって、自分に布団を掛ける。


「……ひなた。もう一個。お願い」

「ん? 何?」

「……手、繋いでて欲しい……」

「アオイが寝たら離すよ?」

「ダメ。……握ってて。絶対」

「オレが近づくなって言ったのに……」

「だから余計。……手、繋いで?」

「え?」

「葵、今日ヒナタに会う時どうしようかって悩んでた。あんなこと言われたから。だから、手繋いでてくれたらわたしも嬉しい。葵もきっと、ほっとするから」

「…………」

「わかった。ヒナタがそんなにしたくないなら、わたしにも考えがある」

「え――」


 アオイは一旦寝ていた体を起こして、オレに耳打ちしてくる。


「チューしたこと、葵に言っちゃおうかなー?」

「……!?」

「あ。ほんとにしたんだ」

「……!? 鎌掛けた……?」

「ちょうど入れ替わってわたしが起きる時で、曖昧だったんだけど口に違和感あったから」

「……っ。手、……繋ぐ」

「あは! かわいいヒナター」

「……絶対言わないで」

「なんで? 王子様みたいだったよ!」

「……あのさ。やっぱり女子ってそういうのが好きなのかな……」

「え? どういうこと?」

「っ、だから。助けてもらうのは、王子がいいのかなって。思ったり……」

「うーん。まあそういうのはちょっと憧れることも、……あったりなかったりするんじゃない?」

「……そっか」

「ん? ……どうしたの? ヒナタ」

「ううん。何でもないよ。ほら、早く寝なよ」