すべてはあの花のために❽


「よし! それじゃあわたしを気絶させてくれ!」

「え」

「言ったでしょ? 寝るか気絶しないとダメなんだってー」

「いやいや……」

「わたし基本寝付きが悪いからさー? 布団の中でも全然寝られないんだよねー」

「……まさか、だからアオイの時間が二時間あるとか、言わないよね?」

「あは! そうとも言うね!」

「はあ……」

「……一つ言っておく」


 そう言って少し、アオイの空気が張り詰める。


「こういう無理をしたり、体調が悪くなった時に気絶とかして倒れたりしたら、初めに出てくるのはわたしだと思ってくれていい」

「…………」

「わたしだって、葵の時間を奪ったりしたくないんだけど。……こればかりはね」

「わかった。オレがなんとかできる時は、アオイの姿をみんなに見せないようにしたらいいんだね」

「さっすが。飲み込み早いね」

「ハナが嫌がるなら。……ハナの気持ちの整理がつくまで、隠してあげる」

「……うん。ありがと」


「それから……」と、アオイは話を続ける。


「契約違反。主に日記だけど。それができなかった時、葵はきっと寝ようとしない」

「アオイが出てくるから?」

「そうだね。でも今日記はほとんどパラ見だし、わたしも、葵が表に出てても何となくわかるから、そんなに重要なことじゃないんだ」

「要は、起きてる方がハナにとっては無理してることになると」

「うん。だから、寝かせてあげて? それぐらいだったら多分出てこないからさ。よっぽどのことがない限り」

「うん。オレがいればそうする」

「ありがと。それじゃあ気絶させて!」

「……すごいMっぽい発言……」

「だってしょうがないじゃん! 今からだったら絶対時間かかるよ!」

「……いいよ、それで」

「え?」


 ぽんぽんと、小さな頭をやさしく叩く。


「オレがハナの体にそんなことするわけないじゃん」

「……心にはめっちゃ傷、つけられてるけどね……」

「ん? 何?」

「……なかなか寝ないよ? それでもいい?」

「うん。大丈夫。……いつもアオイ一人でしょ? 寂しかったでしょ?」

「…………」

「何してあげよっか。してもらって嬉しいこと、ある?」

「……い、一回、だけ……」

「ん?」

「……ぎゅって。していい……?」

「……うん。おいで」

「……! うんっ」


 両手を広げて、その小さな体を抱き締めてやる。


「……わたしは。みんなに嫌われてたから……」

「花咲の人も?」

「よくは、思われてないと思う。あの頃わたし、暴れてたし……」

「アオイもやさしいいい子なのにね」

「え……?」

「いつでも言っておいで? つらかったこと、なんでも聞いてあげるから」

「……うん。ありがと。ひなたっ」

「お礼を言ってもらって申し訳ないんだけどさ」

「……? どうしたの……?」


 腕の中のアオイが、ひょっこり顔を出して見上げてくる。


「今の会話、ばっちり録音してたり?」

「え」