すべてはあの花のために❽


「……でも。お姉さん……」

「ハルナもさ、気にしてたんだ。ずっとハナのこと」

「……え?」

「オレが相談してたから。……ハナのこと、死ぬ間際まで心配してたよ。助けてやれって。そう言ってた」

「お姉さん……」

「だから、ハルナの分まで助けるよ。じゃないと呪われそうだし」

「……わたしも、助ける」

「うん。……それで、初めはハナの担任として接触しようとした先生から、理事長はハナのことを聞いていろいろ調べたみたいなんだ。名前はわからなかったみたいなんだけど……」

「……そっか」

「このスマホに、多分だけどハナと葵に関係した人たちの情報が入ってる。それを、オレがもらった」

「……理事長が、動けないからだね」

「うん。雨宮先生も、表だっては動けないからね。ハナとアオイのことを知っている、信用できる子どもに、託してくれたんだ。それは、花咲の二人もそうだよ」

「……でも。危ない……」

「大丈夫。これから駒を増やしていくから」

「え……?」

「オレだって、やっと会えたのにハナから離れたくないし、オレも死にたくない。ハナだって消させない。だから、使えるものは使う。それが棋士だからね」

「……か、顔が悪い顔になってる……」

「全部ハナのためだし。オレは、ハナのためなら人だって殺せる」

「……! だ、だめ……!」

「って言うと思うから、誰かに殺させるかもね。まあ極端な話だよ? するわけないじゃん。檻の中入ったらハナに会えないんだし」

「……い、一番怖いかも……」

「……今、ハナって眠ってるの?」

「眠ってるとは違う。起きてるんだけど、意識はない感じ」

「よくわかんないね」

「葵がもし寝ても、わたしの時間になったら、睡眠時間にはならないんだ」

「え?」

「だから、いつも早く寝てたんだよ。9時とか」

「早っ」

「生徒会の仕事を断ったのは、そのことがあったからなんだ」

「え?」

「一日の出来事を日記にも書かないといけないし、課題もあるし、早く寝ないと次の日寝不足だし。やることができなくなってしまうと、契約違反とみなされるから、それを怖がったんだ」

「……そうだったんだ」

「うん。でも今は、してよかったって思ってるから!」 

「……オレも、初めは戸惑ったけど。一緒にいろんなことできて嬉しいよ」

「……ヒナタはさ、なんで黙ってるの?」

「え?」


 ぐいっと距離を縮めて、アオイがそう聞いてくる。


「ルニってこともだけど、気持ちを隠そうとしてる」

「それは……」

「わかんない。どうして隠そうとしてるのか」

「……オレもさ、嫌われると怖いことがあるんだ」

「え?」

「言ったら嫌われると思う。だから、言えないんだ」

「ヒナタ……」

「でも、我慢するのも前ほどじゃないよ? 今は」

「……近づくなって言った」

「あれは、オレのこと知られるのが怖かったから。ハナのことを嫌いになんてなるわけないじゃん」

「……そっか」

「……オレはさ、ハナが幸せなら、それでいいんだ」

「ひなた……?」

「あ、そうだ。これ、オレの連絡先ね? こっちの方のスマホ。アオイには教えておく。覚えられる?」

「え? ……ちょ、ちょっと待って」