「……ん」
「(いや。何してんのオレ……)」
そっと体を離すと、ハナがゆっくりと目を開けた。……開けたんだけど。
「……あんたか、もう一人のハナは」
「……オレンジ、頭……」
開いたその瞳は、真っ赤に染まっていた。
「……ああ、悪魔くんね」
「(ハナ。何でオレのことそんな風に……)」
「……あれ? ハナって言った? 今」
「…………」
「言ったよね今!」
多分、一番バレちゃいけない奴にバレちゃったんだけど。
「あれ? でも、男の子……」
「あんたに聞きたいことがあるんだけど」
「ええ……!? まさか、ルニって男の子――」
「聞きたいことがあるんだけど?」
「あ。はい。すみません……」
しゅんとなった姿が、ハナと似ているようでやっぱり違った。
「……あんたってどっち側」
「え?」
「家? それともハナ?」
先生は、ハナを手に入れてから道明寺がおかしくなり始めたって言ってたけど。
「(でもこいつは、ハナの命の恩人じゃん……)」
しかも花咲家の人は、何度も死のうとしてたハナをこいつが止めたんだと言ってた。だからオレは、こいつは悪い奴じゃないと思う。
「わたしは、…………家側の、人間だ」
「嘘だね」
「え……?」
「だったら即答しなよ。何悩んでんの」
「……わたし、は……」
「……聞きたいことあるんだ。いい?」
オレが尋ねると、もう一人のハナは小さくこくりと頷いた。
「取り敢えずさ、なんて呼んだらいいの?」
「え? ……ハナ?」
「嫌だし。それハナにしか言いたくない」
「ははっ。……そっか。ほんとうに。ルニなんだ……」
「……ハナってさ、今聞こえてないよね。この会話」
「え? 聞こえてるよ?」
うん。窓から飛び降りよう。
「嘘嘘! 聞いてないよ! だから帰ってきて!」
「……嘘はよくないと思うんだよね、オレ」
「ごめんごめん。……最近はもう、わたしが逆に聞こえちゃってるから」
「……どういうこと?」
「前は、わたしの方が全然こっちのことが聞こえてなくて、葵に日記を書いてもらってたんだけど……」
「(そういえば、花咲さんが言ってた気がする)」
「今じゃもう、わたしの力が強いから。……もう、長い時間経つし」
「……!」
「あ。わたしのこと知ってるんなら、そのことも知ってるんでしょ? ルニ」
「ハナにしか呼ばれたくない」
「じゃあ悪魔くんね」
「(それもそれで嫌なんだけど……)」
でもどうやらそう呼ぶらしい。まあいいけどさっ。



