すべてはあの花のために❽


「オレには近づかないでくれる」


 体育祭の係が一緒になって、ハナに近づかれることが多くなった。
 オレが汚い奴だって、バレると思った。だから一線引いた。オレが、……怖かったんだ。

 それからハナと別れたあと、一瞬だけ人影が見えたような気がした。


「……銀色?」


 クラスに一人いた。そして、あの写真の中にも。
 何の気なしに見えるよう追いかけてみたけど、姿はなくなっていた。


「(……もう一人、いた気がしたんだけど……)」


 結局のところ、ハナの家の近くまで来てたりする。


「(……あんな困った顔は、好きじゃない)」


 素直になれなくて。拗れてて。……ごめん。


 ――――――…………
 ――――……


 HRが相変わらず早く終わり、生徒会室に昨日作っておいた資料を取りに来たんだけど。


「え。………………ない」


 どこを見ても、昨日の資料が見つからない。


「昨日あいつはここに入れてた。なのに、……なんでないの」


 そう思っていたらハナが入ってきた。


「あ。下僕、遅いよ」


 ほんの一瞬、むっとする顔が好き。
 でも、困ったことに去年の資料すら残ってなかったから、完璧に業者の人に説明するのは難しかった。


「わたしは資料を複製してみるから!」


 何回言っても聞かなかった。……ほんと、頑固なんだから。
 手伝うって言うのに、拒否してくるし。……無茶、させたくないのに。


「……何だって言うの」


 もっと頼ってくれたっていいのに、ハナに押し切られてしまう。


「(……それに、何で資料がなくなったんだ)」


 そう思いながら、準備をしようと視聴覚室に行っている途中で、また銀色が目に入る。
 今はもう、ちゃんと名前もわかる。月雪 蓮。本当は潰れている会社の跡取り息子だった奴。


「(関係者だから、ちょっと用心しておいた方がよさそうだけど……)」


 普段の学校生活で、そんな悪い噂なんか聞かないし。


「(今時、王子って……)」


 女子がキャーキャー言ってた気がする。


「(ハナも、女子だからな……)」


 ああいうのに、やっぱり憧れたりするんだろうか。