……体が動かなかった。
ハナがアキくんに突き落とされている現場を、ちょうど目撃しても。
「――ッ、葵ちゃん!!」
誰よりも一番最初に駆けて行って飛び込んだトーマが、かっこよく見えた。やっぱり、ちょっと悔しかった。
トーマが抱えていたハナの腕がだらりと垂れ下がっていて、肝が冷えた。
「(……どう考えたって今じゃん。ハルナ借りるのっ)」
考え方もすでにおかしいけれど。でも、それだけ動揺した。
元気そうな顔を見た時は、ほんとにほっとしたけど。
バーベキューの時、トーマと何か真剣な話をしてた。多分アキくんのことかなと思ったけど。
「(……今回は、何をどうやって助けてあげたらいいのかわからないや)」
どうしてアキくんがあんな状態になったのかも、多分『あれ』のせいなんだろうけど……。
「(シントさんがアキくんのお兄さんってことを、ハナは知ってるのかな……)」
でも、流石にオレがシントさんにまで連絡を取ったら、あいつに気づかれるかもしれない。
「(……難しいよね、ほんと)」
あいつが無理をしないように。でも、あいつの助けになってやれるようなことをしてやりたい。
そんなことを思いながら、結局どうしたらいいかわからずに休みが明けた時、アキくんの耳からは『それ』がなくなっていた。
「(……よかった、けどさ)」
どうやらアキくんは、それがなくなっても甘いものはどうやらやめるつもりはないみたいで、またみんなで必死に止めないといけないんだなって思った。
「(……助けて、やれなかった)」
悔しかった。自分の置かれた立場が難しいのは、十分わかってるつもりだ。
「(これからもこんなんだったら……)」
何をどう助けてやったらいいのかわからないまま、日は過ぎていくばかりだった。



