すべてはあの花のために❽


「え?」

「相手の幸せなんて、勝手にあたしたちが決めることじゃない。相手が自分で、幸せだって決めるものだよ。だから、日向がもし、自分じゃ幸せにしてあげられないって思ってても、向こうは『勝手に決めるな!』って思ってるかもしれないよ?」

「………………」

「こういう人と人との幸せは、お互いが幸せだって思ってるからこそ、本当に幸せなんだとあたしは思うけどな」

「………………」

「だから、相手の幸せを日向が勝手に決めつけちゃいけない。勝手に幸せになれるかもしれない芽を、摘み取っちゃいけないんだよ」


 わしわしと頭を撫でてくる手が、あたたかかった。


「いいじゃん別に。好きなものは好きなんだから。想うだけならいいじゃん。それさえも無理に押し殺そうとしたら、日向壊れちゃうよ?」

「…………、…………さないと」

「ん?」

「……っ。押し、殺さないと。……暴走、する」

「ありゃま」

「だから、少しはセーブしないといけないんだ。どっちみち」

「あんたも、相当だね」

「まあね」


 でも、キサに話して少しスッキリした。


「チカにさ、オレのこと見てたら苛つくって言われたんだ」

「あいつも相当だからな……」

「中途半端な奴にはやれないって」

「ほおー。言うようになったじゃん」

「……中途半端なんだ、確かに。どうやったって溢れてくるのに、それを止めようとしたって無理な話」

「日向……」

「近づきたいよそりゃ。でも近づいたら近づいただけ、オレの黒いとこ、知られるんじゃないかって怖いんだ」

「十分黒いけどね」

「もっと黒いの、あるんだ。誰にも言えない」

「……あたしにも?」

「ん」

「……それを聞いて、嫌うと思ってる? あたしが」

「そんなの、わかるわけない。オレはキサじゃないから」

「まあそうね」


 違う。そうじゃ。なくて……。


「……違うんだ」

「え?」

「嫌わないって。信じてる。……けど。嫌われたらって思うと。怖いんだ。みんなは。そんなことないって。思ってる、けど……」

「…………」

「……ただ。言う勇気が。出ない、だけ……」

「……そっか」

「でもさ。無理はしないよ。あんまり」

「え?」


 もらった飲み物で、渇ききった喉を潤す。


「……苛つかれるの嫌だしね、チカに」

「日向……」

「そうだよね。オレが勝手に、あいつの幸せを決めちゃいけない」

「……うん。あっちゃんの幸せは、あっちゃんが決めるんだから」

「え。……オレ、別にあいつが好きって言ってないけど」

「この期に及んでまだそんなこと言う? 無理だから流石に。わかってないのあっちゃんぐらいだよ」

「…………」

「あれ? おーい日向?」


 慌てて膝の中に頭を入れた。耳まで赤くなった自覚があるから。