「……それじゃあ、たとえばの話だけど」
「……?」
そう言って、キサがゆっくり話し出す。
「日向の好きな子が」
「そんな奴いない」
「……たとえば、日向に好きな子がいるとするじゃない?」
「……ん」
「その子が、日向と同じようなことを思ってたらどうする?」
「……え?」
「たとえばよ? その子が、自分が幸せにしてあげられないんだって。そう思ってたらどうする?」
「そんなこと……」
「自分のことを知られたら幻滅するって。だから自分の気持ちを押し殺してたらどうするの?」
「……絶対。幻滅なんてするわけないじゃん」
「本当に? どんなことでも? 日向は幻滅しない? 嫌いになんてならない?」
「そんなことで幻滅するなら、こんなに好きになんないし」
「……あのね? それも向こうも同じ気持ちかも知れないって、思ったことない?」
「……だって、向こうはオレのこと……」
「たとえ好きではなくても、大事で、大切だと思ってる相手のこと。日向が好きな子は、幻滅なんてするのかな?」
「……わかんないよ。他人がどう思ってるなんて」
「そっか。日向は、好きな人がどんなことを考えてるのかわかんないんだ」
「え……?」
そう言うと、キサはにこっと笑う。
「あたしはわかるよ? 菊ちゃんのこと大抵は」
「…………」
「でも、やっぱり時々わかんない時もある」
「…………」
「そういう時は、聞けばいいんだよ。簡単なことじゃん」
「……聞けないよ。教えてくれるわけないじゃん」
「どうして?」
「……オレだって、好きな奴に言いたくないことがあるから」
キサは、ふっと小さく笑った。
「日向は、自分の中で考えて自己解決しちゃうんだね」
「……どういう、こと」
「実際のところの本当の気持ちなんて、相手に聞かないとわかんないってことだよ」
「……さっきわかるって言ったじゃん」
「大抵って言ったでしょ? 根っこの部分までは流石にわかんないよ~」
「そ、そう……」
やっぱりキサは、なんだかやさしい顔をしてふわりと笑ってくる。
「相手の幸せなんて、自分が勝手に決めつけるものじゃないよ?」



