すべてはあの花のために❽


 ハナの頭に、……ぽんと手を置いて、やさしく撫でる。


「お疲れ様」

「――――」

「キサとキクたち(、、)のこと、頼むよって言ったでしょ。……あんたを信用してよかった。気付いてくれるって信じてた」

「ひなたくん……」

「だからまあ、下僕にしてはよく頑張ったんじゃない?」

「っ、さいごのはいらない!」

「そう?」


 こんな捻くれたのが、本当のオレ。
 でも、そんな拗れまくった奴の言葉を、素直に受け取ってくれて。……ありがとう、ハナ。

 泣き出しそうになってるハナに、そっと声を掛けてやる。


「はいはいお疲れ様。言ったじゃん、あんたなら大丈夫だって。オレが言うんだから自信持ちなよ」


 ただ、どこまで巻き込むかはわからなかったけど。でも、絶対にハナなら成功するって信じてた。
 オレが言うんだ。昔から知ってるオレが。だから、……自信持っていいんだよ、ハナ。


「そういえば、MVPなら賞品があるはずだよね」


 でも、やっぱりいじわるしたいのは、今も昔も変わらない。


「え? 賞品?」

「ないの?」

「……ちなみに、何が欲しいの?」


 オレも頑張ったもんねー。
 賞品もらっていいでしょう。なんせMVPだし。


「じゃあ、トーマにされたことをしてみて欲しい」

「そっ、それは無理な相談で……」

「なんで? トーマにはされたのに」

「あ、あれはその。無理矢理というか……」

「無理矢理て……」

「わたしが油断したというか……」

「油断て……」


 ハナがパニックになりながら真っ赤になってる。絶対何かあった。


「〜〜っ。とっ、とにかく! わたしにはできないんです……!!」

「……へえ。できないことをされたと」

「ひぃっ!」


 そんなこと言うハナには、……そうだな。


「わかった。じゃあオレは、その賞品を【あんたに悪戯する権利】として有難く戴くことにする」

「ええ?! い、意味がわからないんですけど?!」

「いつどんなことするかわからないから、精々いつ来るのかビクビクしてたらいいよ」

「や、……やっぱり君は悪魔だよう!」

「お褒めのお言葉ありがとう」

「褒めてないよう!?」


 こうしておいたら、いつでも意地悪できるしね。
 頭いい。流石オレ。


「(にしても……)」


 大阪に着いて新幹線に乗り換える時、少しだけ自分の胸に手を当てる。


「(さっきのって絶対……)」


 トーマと電話してるだけで、とか。誰かに顔を赤くさせられてたり、とか。誰かと、キスしたり。とか……。


「(考えるだけで、ムカムカして気持ち悪い……)」


 この気持ちの正体なんて、知ってる。
 だって、ハルナがハナって呼ぶのでさえ、胸がちくちくしてたんだから。


「(……オレ、いつか爆発するかもしれない……)」


 だって、みんなの気持ちなんて目に見えてる。寧ろ見えすぎだし。


「(取り敢えずはけ口はチカにして……)」


 でも、この気持ちが治まることなんてあるんだろうか。


「(……しょうがないじゃん。好きなんだからっ)」


 しょうがないじゃん。そんなことでって思うかもしんないけど。


「(……嫉妬で。ぶっ壊れるかもな。そのうち)」


 そうならないように、少しずつ鍛えておこうと思った。どうやって? って話だけど。