すべてはあの花のために❽


 それから新歓最終日。
 無事あいつらはドロケイの途中で、キサを連れて帰ってきた。


「チカは別によかったのに」

「え? ヒナタ? オレの扱い酷くない??」


 そうやってチカをいじめていても、やっぱり心の底から嬉しいと思った。


「(……おかえり。キサ、チカ、キク。……ハナ)」


 彼女たちを巻き込んだのかどうかはわからなかったけれど。無事な姿と、嬉しそうな顔を見るだけで、オレは十分だった。それで十分だったんだけど……。


「(……あ。誰かと電話してる)」


 その顔がちょっと楽しそうで、つまらない。


「何? 誰から」

「ヒナタくん……」


 誰かと楽しそうにしてるのが、ちょっと嫌だった。


「……誰と話してんの」

「あ。それは…………そうだ。ヒナタくん、ちょっと待っててくれる?」

「は? いや、別に用がないならオレは」


 また相手と話し出したし。……つまんない。
 しかもちょっと顔赤くなってるし。……何。ムカムカするんだけど。


「あのさ、用ないなら……って、どうしたの。顔赤過ぎなんだけど」

「ひ、ヒナタくん!?」


 そのあとまた真っ赤になったし。
 ……あー。だめだ。なんだこれ。イライラする。


「暑いならせめて陰に入れば? じゃ。オレ行くから」


 ていうか見たくなかった。
 ハナが、……誰かに真っ赤にされてるとこなんて。


「あ! ダメダメ! お願いだからちょっと待ってて!」


 でも、そうやって引き止めてくれて、ちょっと嬉しかったりもする。


「おっ、……おねがいちまちゅっ!」

「……え。なんか壊れたし」


 とかわけのわからないことを言い出したから、マジでこいつとうとう壊れたかと思った。

 そうしたらスマホを渡された。相手はトーマ。


『陰のヒーローお疲れ様ってこと』


 どうやらハナは、ちゃんとトーマも、ギリギリの人までもすくってあげたらしい。


「……まさか、本当に行ってると思ってなかったから。ちょっと驚いた」


 ほんと、驚いた。オレがやったことが、本当に役に立ったなんて。


『自分が気付いてることを、お前がよく思わないかもしれないからって言ってたぞ。ちょっと寂しそうに』


 ……そんなこと、ないのに。
 別に、オレになんか気づかなくてよかったんだ。多分ツバキさんが言ったんだろうけど。ちゃんと言うよ。お疲れ様って。でも……。


『本気だから、手出すなよ』


 その言葉はちょっといただけない。


 あなた、キサ好きだったんじゃないんですか?
 ソウデスカソウデスカー。


「(……ま、オレはあいつを幸せになんてできないけど)」


 それでもやっぱりムカつく。


「誰があんな奴に手出すの」


 そんな風に言っても、きっとトーマのことだから、オレの苛々には気付いたんだろう。
 そのあと、電話は替わったけど……。


「(……何唾つけたって。勝手につけられるハナもどうかと思うけど)」


 絶対問い質す。はい決定。