すべてはあの花のために❽


「あんたこれから奪還しに行くのに、そんな情けない顔でいいの」


 申し訳なさそうな顔で、一生懸命両手を背中に隠していた。


「(やっぱり不安だったんだ。オレなんかに、縋りそうだったんだ)」


 ハッキリとじゃないけど、少しでも頼りたいと思ってくれるだけで、嬉しかった。


「(……オレも、このままじゃダメだ)」


 いつまでもぐだってたらダメだ。
 読者さんも、『これ誰? ほんとに日向くん?』って思ってるはず。


「(今はもうルニにはなれない。だから、今のオレの言葉でハナの背中を押してやらないと……)」


 自信はなかった。オレなんかの言葉で……って思ってしまうと、言おうにもなかなか言葉が出てこない。
 長い沈黙が続いた。ハナも、本当に不安げに体が小さくなっている。

「はあ……」と大きくため息をついたあと、立ち上がってハナを見下ろす。


「(……今はもう、オレの方が高いね)」


 あの頃は同じくらいだった。……よかった。成長止まらなくって。


「(不安なのはいつも、オレじゃなくてハナの方)」


 だったらオレが。今のオレが。


「あんたが言えないなら、オレが言ってやる」


 ……ハナを、助けてあげる。


「あんたは大丈夫。ちゃんと、チカとキクとトーマと一緒にキサを連れて帰る。絶対に。……怖くなんかないから」

「――!」

「だから自信を持って。あんたなら(、、、、、)絶対大丈夫。だから、――行ってこい下僕」


 これが今の、オレの精一杯の言葉。


「(でもこれは、ハナにしかできないことだから)」


 目を見開いたハナは、自分の頬を思い切り叩いた。


「ありがとうヒナタくん。さっきは言えなくてごめん。絶対にキサちゃんを連れて帰ってくるよ! だから、安心して待ってて! ――行ってきますっ!」


 そして、最高の笑顔と一緒に残して去っていった。


「(……今のオレでも、笑ってくれた……)」


 ……なんだ。できるじゃん。なんだ。何を、今まで不安がってたんだろう。


「(泣いてる顔も好きだけど。やっぱりハナは、笑ってる顔が一番いい)」


 打ちきっていなかったメールを二人に送り、みんなの元へと帰って行った。


「(……いってらっしゃいハナ。頑張ってきてね)」


 心の中でそっと、そう呟いた。