すべてはあの花のために❽


「君には別の話があると、そう言ったね」

「……はい。なんですか?」

「彼女が『願い』を叶えるということは、どういうことか。わかるかな」

「え? ……みんなが、助かる?」


 オレがそう言ったら、小さく頷いたあと理事長は目を閉じる。


「その通りだ。確かにみんなが助かっていくだろう。でも、彼女はその『願い』を叶えるために何をすると思う?」

「……え?」

「日向くん。答えは【無理】だ」

「……!!」

「言いたいこと、わかるよね」

「……はい」


『無理をし過ぎると、ハナ自身の時間が短くなる』


「君にも、ぼくからの『願い』を伝えたい。何となくわかっているんじゃないかと思うけど」


 わかってる。そんなの、オレにしかできないことだ。
 ハナのことを知っていて、みんなのことを知っていて、願いのことを知っていて、何にも縛られてない動ける子ども。


「あいつの『願い』を叶える助けをしろ、ということですね」

「……その通りだが、いいかい? あくまで助けだ。彼女自身が叶えることに意味がある。君が叶えてしまったらダメなんだ」

「オレだって、みんなを助けたい」

「わかっているよ。でも、それはどうか、彼女にさせてやって欲しいんだ」


 頭を下げてまで言ってくる理事長が、この願いの奥に、みんなを助ける以外のことを思っているなんてことは、この時のオレにはわからない。


「……それが、あいつにとっていいことなんですか」

「きっと彼女も気がついた時、これ以上ないほど嬉しいと思うよ」

「……やっぱりよくわからない」

「どうかな。やってくれる?」


 ハナのためになるなら断らないってわかってるくせに、理事長はそんなことを聞いてくる。


「やりますよ。やればいいんでしょ」

「そうか。そう言ってくれると思ってたよ」

「だから事後報告だったんでしょ? 知ってたら止めてました」

「だ、だよね~。やっぱり……」


「ふう~……」とわざとらしく言いながら、理事長が額の冷や汗を拭いていた。


「あいつに必要以上に無理させないよう、オレも動きます」

「ああ、そうしておくれ」

「駒も有効に使わせてもらいます」

「そ、そうしておくれ……」