すべてはあの花のために❽


 何を言い出すのかと思ったら。


『その花は開かずに、蕾のまま枯れ、赤い花と混じり、黒い花を咲かす』

『はい?』

「(いや、言いたいことわかるけど。……面倒くさい言い回し)」


『彼女は今から恐らく水をやる』

『へ?』

「(ん? どういうこと……?)」


『ぼくが今からそのことを話すから、まだ決定ではないけどね。それでも彼女はするだろう。ごく当たり前のように水をやって、成長を助けると思うよ』

『ミノルさん……? 言ってる意味がよくわかんねえんだけど』

『ま、それは彼女がどうするかまだわかんないからね。菊は……まあ、そっちの柱の陰にいてねー』

『は? ちょ、ミノルさん?』


 キクが来たということは、ハナのクラスのHRも終わってるということだ。しばらくしたら、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「(ていうか、この盗聴器の性能めっちゃいい)」


 一言一句聞き漏らさないように、そして何回も聞き直せるように、スマホのボイスメモを開いて準備する。


『やあ、いらっしゃい。来るんじゃないかと思っていたよ。道明寺葵さん』

『理事長、お話したいことがあります』

「(ハナ……)」


 それから理事長がハナにしたのは、『願い』の話。


「(『欠けてる』って。……ハナ、もしかして)」


 ハルナの存在をどこかで知ったのかと思った。みんなにはオレら以外の前では話を出さないで欲しいって言ったけど、流石にハルナのことを知ってる人全員に言うことなんてできなかったし。


「(……それに、理事長が言ってた憂いって)」


 思い当たる節がないこともない。


「(でも、なんでそんなことをハナにさせるのかがわからない……)」


 今まで誰も触れてこなかったような話題を、敢えて何故ハナにさせるのか。


「(……やっぱりハナ、勘がいい……)」


 柱の陰に隠れてたキクが見つかって、なんか軽くバトってる。


「(音なんて何もしなかった。……なのに、なんでハナはわかったんだろう)」


 めっちゃキクのイメージがハナの中で悪くなったあと、ハナは部屋を出て行った。


『ミノルさん……』


 キクが少し下がったテンションでそう聞いてきたあと、滅多にしない感情を表に出した大声を出してきた。


「(耳痛って~……)」


 しかも、キクも理事長から『願い』を言われた。


「(理事長は、一体何をしようとして……)」

『オレは今も昔も【あいつ】だけのヒーローだ。……あんたなんてお断りだよ』


 キザな台詞を吐いたあと、キクは部屋を出て行った。


「(やっぱりキクはまだ、諦めきれてないんだな……)」


 キサには婚約者がいる。それはみんなが知っていることだけど、二人の間にはやっぱり好きが見え隠れしている。