「道明寺財閥当主、道明寺グループ総帥、道明寺 薊」
中肉中背の、あまり取り柄もなさそうな。下手をしたら気弱そうに見える、やさしい笑顔の男。
「その妻、エリカ」
厚い化粧を施し、真っ赤な唇で、まるで魔女のようだ。
「その秘書」
眼鏡をかけた男性。如何にも仕事ができそうな感じが滲み出ている。
「彼は、よくテレビで見るからわかるかしら」
「え。政治家の……」
確か、……国務大臣。父さんが一番、毛嫌いしてた男だ。
「それから彼は、手を組んでいるところの製薬会社の息子」
なんというか、猫っぽい。チカとは違って笑い方がむかつくけど。
「それから、世間ではまだ名前が残っているけど、実はもう潰されてしまった会社の息子」
どこかで見たことある銀髪。
「(あー。オレ基本他人に興味なかったからなー。もうちょっとちゃんと、みんな以外も見とくんだったー)」
「それから執事の、皇 信人」
「……え?」
聞き間違えか? それとも同姓同名?
「日向くん。信人くんはわけあって今、彼女の執事として雇われてるんだ」
「……そ、それってアキくんとかは……」
オレがそう聞いたら、理事長は緩く首を横に振った。
「どうかこれも、内密にしておいてくれ」
「……あいつが笑えてるなら。黙っておきます」
「うん、いつかみんなも知る時が来るだろう。その時まで。どうか」
「……はい」
オレが小さく頷くと、申し訳なさそうに二人が笑った。
「それから、彼らの息子がどうやらいるらしいのだけど、名前はまだわかっていないの。ごめんなさいね」
「……息子……」
黒髪に、黒い瞳。やさしげな雰囲気で、そんな悪いことをしているとはどうにも似付かない。
「また何かわかったことがあれば、随時そちらに連絡を入れておくわ」
「わかりました」
「よろしく頼んだわよ? 騎士さん?」
先生はふわりと笑ってぽんと頭を撫でて、颯爽と部屋を出て行った。
「……? きし?」
「そうだね、君は騎士だ」
残った二人は、そんなことを言ってるけれど。
「……ああ、棋士。そうですね。いい感じに駒は使わないと」
「いやいや、言ったのはナイトの方……」
それだけ彼女のことを思って、助けてやりたいと、守ってやりたいと思っているんだから。
「……オレは日陰なんで」
「え?」
そう言ったオレに、理事長はきょとんとした顔で返してくる。
「こんな汚い奴、あいつの騎士になれるわけないじゃないですか」
「……わかっていたんだね。先生が言った意味を」
「こんなオレが、あいつから見えるところで守るなんて。絶対に嫌です」
「日向くん……」
「オレは、姫はそばで守ってやりません。あいつのまわりにたくさんのナイトをつけて、守ってやります。……オレ自身は、そんなことぐらいしかできないですから」
「……君は、それでいいのかい」
「十分です。あいつが元気で生きてくれたら。あいつが笑ってくれたら。幸せなら。……それが、オレは一番嬉しい」
いいんだ。オレの、それが一番の幸せなんだ。



