すべてはあの花のために❽


「ひなは、気になる子とかいないのー?」

「おれ今カメラにしか興味ない」

「まああたしもいないし、人のこと言えないけどねー」

「はるなはつばさが好きでしょ? いいね、兄姉愛」

「それこそ禁断だね! きゃあ!」

「(……なに、きんだんって)」


 バシバシッとオレの背中を叩く手が痛かった。


「あーあ。つーにいが兄妹じゃなかったらよかったのにー」

「(え。ほ、ほんきだったの……)」

「だって! あんなイケメンそうそういないよ!? あれは女としては見逃せないよねー」

「いや、みんなかっこいいじゃん。とーまとか」

「なにいってるの。とーまくんはきさちゃんがすきじゃない」

「(え。そ、そうなの……?)」


 ほんとによく、いろんなことを知っていた。ほんとに、いろんなことに気づくのがハルナだった。


「……あそこも、いろいろ大変っぽいよね……」

「……??」


 ハルナがこの時、何を言っていたのか。この時のオレにはわからなかった。
 でもハルナからそのことを聞いてから、そういう目でもう一度見たら、何となく、わかった。

 いろんなことに気づくハルナが、ちょっと羨ましかった。
 自分だってみんなのこと観察してたけど、そんなことはわからなかった。なんで、トーマもハルナも、人の気持ちにすぐに気づいてやれるんだろうって。ちょっと、いいなって思った。


「なんではるなは、そんないろんなこと知ってるの」


 ついぽろっと、そんな言葉が口から出てきた。ハルナもビックリしてたけど、一番ビックリしたのはオレ。


「あ、いや。……なんでも、ない」

「……ひーなっ」


 そう言ってまた、ぎゅーってくっついてくる。なんだって言うんだ。


「それは、あたしがいろんなことに興味があるからだよ?」

「……ふーん」

「気がつくのは、みんなが大好きだからだよ?」


 どうしてそんなに気がつくのか、なんて聞いてないのに。
 でも、知りたかった。


「ひなも、みんながすきでしょ?」

「……まあ、かんさつたいしょうとしては」

「うそばっかり。自分のことわかってくれるみんなが大切でしょ?」


 図星だった。やっぱりハルナには、自分の考えなんかバレてしまうみたいだ。


「こじれてるな~。ははっ」

「……うるさいな」


 恥ずかしかった。考えを、見透かされているのが。


「きっと、かんさつたいしょうとかじゃなくて、大切な人をちゃんと見てたら。その人のことよくわかるよ」

「……あっそ」


 大切な人。ちゃんと見る。……か。

 ……やってみたい。ハルナみたいにとはいかないけど、せめて。みんなのこと、もっとちゃんと見たい。
 オレのこと、……オレらのこと。わかってくれたオレの大切な居場所を、わかりたい。

 オレらのこと、助けてくれたみんなを、何かあったら助けてやりたい。