それから三人で、今度はきちんとした情報交換を行った。
「てっきり彼女と仲が良かったのは、あなたの姉のハルナさんの方かと思っていたけど……」
「どうやら日向くんの方だったみたいだ」
「先生は、前に担当していたお母様からオレの存在を聞いていた……」
「ええ。だから、その子になら何かしら情報を渡しているのではないかと思ったの」
「たとえば、どうやって彼女があの家に引き取られたか、とかね」
「え? ……それ、公安は知っていたんじゃないんですか?」
オレがそう聞くと、二人は難しい顔をする。
「……今はそんなことをするつもりはないのよ、安心して欲しいの」
「え? 何をですか」
「公安の人たちははじめ、薬の動きがあったからそれを調べていたんだ」
「(……!!)」
薬と言われて、心の中で反応してしまったけど。大丈夫だ。表には出ていないはず。
「それで、確実な証拠は掴めていないのだけれど、なんとかあの家が怪しいんじゃないかってことを掴んだの」
「……道明寺」
「何やら不穏な動きをしていることが多くてね。それに、彼らのまわりの会社、企業などがここ十数年にかけて景気が悪くなっている」
「…………」
「それで何が原因なのか調べたら、『ある一人の女の子』に至ったの」
「え。……ちょっと、待ってください」
「君ももう高校生だ。どうして彼女たちが動いているのか、わかるね」
「私の……いえ。母の任務は、『道明寺 葵』と呼ばれる女の子を、この世から排除することだったの」
「――!!」
オレはガタンッと大きな音を立てて立ち上がる。
「そんなことさせません! するって言うなら、オレが公安の人たち全員消し去ってやる!」
「こらこら、そういう口をこの人たちに向けてはいけない」
「いえいいんです。彼の言っていることは正しい」
「え……?」
「浅はかだったの。公安も。彼女のことを知りもしないで、そんなことを決めてしまって。……でも、私の母が彼女抹殺の任に就いた時に、どうやらわけがあるのかも知れないってことがわかったの」
「彼女のお母様が、対象者を守り切れずに負傷してしまってからしばらく任は空けていたらしいんだけど、娘である彼女が、その任を引き継いでいる」
「はい。それは聞きましたけど……」
「え!? 聞いてるの!?」
「はい、理事長。……実は、彼にもいろいろ協力をお願いしていたんです」
「勝手に私の大事な生徒を巻き込まないでおくれ……」
「すみません。……でも、本当に助かりました」
「……オレは、先生を助けられなかったから」
「私がこの任に就いたのは、彼女に接触するため。ここの教師として潜り込もうと思ったの」
「え? ……でも、あいつは高校になって編入してきて」
「初めはね、あの子は中学で編入する予定だったんだ」
「え……?!」
「それが、どうやら体調が優れなかったみたいで、高校まで延期したみたいなの」
「(……ハナ……)」
「それで彼女は、次の作戦に移ることにした」
「……? 次?」
「ええ。……今私は、あの家に雇われているの」
「え!? それって……」
「そう、所謂スパイってやつ」
「はあー……」
「それで、あそこに潜り込むのに、犠牲者を集めてるっていう情報も入ってきてたから、その犠牲者になったわけ」
「え? それ、先生が大怪我した件ってことですか……?」
「ええ。すぐに連絡してあげたかったのだけれど、あの家に信用してもらうためにいろいろしていたら時間がかかったのと」
「……? と?」
「あの時スマホぶっ壊れちゃって。九条くんの番号控えてなかったから掛けられなかったのよねー」
がっくりと肩を落とした。心配して損したけど。



