すべてはあの花のために❽


「オレが知ってるのはここまでです。……理事長、あいつのこと、助けてやりたいんです。もう、時間がないんです」

「大人までだけど、無理をすれば削られる……」

「花咲の人は、そこそこなんでもできるから、並大抵のことだったら無理には入らないって言ってましたけど……でも、なるべく早くあそこから助け出してやりたいんです」

「……彼女との約束で、公言できないところがあるから、それは言えないんだけど」

「そんな約束知りませんよ」

「日向くん……」

「約束を破ったって、あいつが、ハナが助けられるんなら、破ってくださいよ!」

「君は……」

「お願いです、理事長。助けてやりたいんです。何でもする覚悟はあります。あいつが助かるなら、誰かを殺せと言われたら殺します。犯罪者にだってなります! だから。あいつを。……一緒に助けてやってください」

「君が、こんなに何かのためにしてるところなんて初めて見たよ」

「……大事なんです、あいつのことが。オレを変えてくれた、あいつのことが」

「……約束があるからね、やっぱりぼくからは言えないこともある」

「理事長……!」

「言っただろう? 『ぼく』からは言えないと。代わりに彼女から言ってもらうよ」

「は? 言えないことじゃないんですか……?」

「それはまた明日、放課後に来なさい」

「……よく、わからないですけど……」

「ぼくが今話せることは、君がそこまで知っていて驚いているってこと」

「いや、それ感想……」

「それから、……君の覚悟にもね」

「いえ、だから……」

「ぼくも、実は動けないんだ」

「え」


 そう言った理事長の顔は、とても悔しそうに歪んでいた。


「ぼくは、生徒全員を、あそこに人質に取られているから」

「――!! そんな……」

「ぼくが知らないのは彼女の名前だけ。……彼女から聞いたことと、あと道明寺のことは、とある筋の情報でね」

「……? とある筋?」

「そうなんだ、今その人を呼んだから――」


 その時ちょうど、理事長室の扉が開いた。


「失礼します理事長。強力な助っ人って……」

「え」


 そこから現れたのは…………。


「やあ。急に呼び出してごめんね、雨宮先生」

「え。雨宮先せ」

「くじょーくん!! 会いたかったわ……!!」

「ええ!?」

「ぐえー……」

「むぎゅー!」


 何故か、オレの姿を確認した途端抱きつかれてしまった。


「あ、……雨宮先生? ちょっと落ち着こうか」

「あ。すみません理事長」

「く。……苦しかった」


 にしても、なんでこんなに元気なんだ? 意識不明の重体だったはずだ。なのに。
 と思って先生をもう一度見たけど、……そこには痛々しい傷跡はたくさん残っていた。


「助っ人って九条くんのことだったんですね、納得」

「……あ、あの。聞きたいことが山ほど……」

「ん? どういうことか教えてくれるかな?」