すべてはあの花のために❽


「ひなー。またカメラ~?」

「うん。撮ってあげようか?」


 そう言ってカメラを向けたら、勝手にポーズをし出す、同じ顔のハルナ。


「そんなにたのしいの?」

「うん。たのしい」


 オレが即答すると、何故か嬉しそうにハルナが笑う。


「……なに」

「ひなにすきなものができてうれしいなーっと思って!」


 そう言ってむぎゅーって抱きついてくる。どうやらこいつの捻くれは、みんなと会ってから徐々に無くなったらしい。


「……なんで? そんなにうれしいの?」

「うん! きっとつーにいもよろこぶ!」


 ツバサ? なんで兄貴が喜ぶんだよ。


「そういえば、またつばさ女の子に告白されたらしいよ」

「ええ!? すごーい! さすがつーにい!」


 オレの隣に座って、一緒に今まで取った写真を見に来る。
 あんま喋んないし、つまんなくないのかなって思ったけど。でも、きっといるだけで居心地がいいんだ。オレだってそう。


「ひなは? 女の子から告白されたことは?」

「残念ながら男にしかないね」

「ええ!? そっち系の男子!? まだ小学生なのにっ!」


 やっぱり姉といえど女子。こんな話になるとテンションが上がるし……何。そっち系って。


「よくわからないけど、はるなと間違えられた」

「あら。それはわるかったね」


 一気に冷めた。なんだ、このテンションの落差。


「……はるなは?」

「残念ながら、あたしは女の子からしか告白されないね」

「え。そうなの?」

「うん! 男前ー! すきー! って。女子に抱きつかれる」


 オレがこんなだからか、逆にハルナはとても活発だ。みんなと遊ぶ時も、みんなをけちょんけちょんにしてるぐらいだ。
 だから学校でも、元気な方がハルナ。無口な方がオレって定着してたみたいだ。一部の知らない人は、時々間違えるけど。


「そうだね。はるなは男にはもてないだろうよ」

「べつにいいも~ん。つーにぃよりもイケメンがいたら考えるけど!」


 まあハルナにとって、ツバサが今断トツで一番なのだろう。
 ……しかし残念なことに、そのイケメン兄はある日を境にオカマへと変貌するけどね▼