「来月の『桜影』ライブ行くよね」
凜花がスマホを開くと、朝陽からのメッセージが届いていた。
「行くよ」
すぐに返信しようとしたが、少し指が止まる。今回は、桜陽女子高の「桜影」ファン仲間――小寺遥香、岡崎未侑、山本麻里亜と一緒だ。朝陽は“真琴推し”仲間とはいえ、男子高校生である。彼女たちがどう思うかが気にかかる。
「今回は、学校の友達と一緒なの」
しばらくして、朝陽から返事が来た。
「俺、邪魔かな?」
――察しがいい。
申し訳ない気もするし、朝陽に会いたい気持ちもある。でも、遥香たちがどう思うか……。
返信に悩んでいると、再びメッセージが届いた。
「こっちもバンドメンバー誘って行く。あいつらも『桜影』に興味あるみたいだし、それならいい?」
「……それならいい?」
どういうことだろう。戸惑いながらも聞き返す。
「俺が一人で行くより、俺たちに注目が集まらないんじゃないかって」
――そうかなあ。そんなことない気がするけど……。
ここまで言われて断るのも悪いと思い、覚悟を決めて返信した。
「わかった。一緒に『桜影』ライブで盛り上がろう」
◇◇
ライブ当日、「Beat Cellar」の前で待ち合わせた凜花たちとステラノーツのメンバー。
「はじめまして、東城朝陽です」
朝陽が爽やかに挨拶すると、遥香が驚いたように目を丸くした。
「わっ、本物の男子高校生!」
「遥香、そんなの当たり前でしょ……」
未侑が苦笑し、麻里亜は興味深そうに朝陽を観察している。その横では、リードギターの北村翔とキーボードの松田野々花が談笑しながら、ベースの本川晃、ドラムの猪瀬淳司と合流していた。
最初こそぎこちなかったが、ライブが始まると全員が「桜影」の音楽に夢中になった。真琴のドラムが響くたびに、朝陽と凜花は顔を見合わせ、自然と拳を突き上げる。
ライブが終わり、外に出た。ステラノーツのメンバーと別れた直後、麻里亜が早速聞いてきた。
「やっぱり『桜影』最高! ところで、凜花。なんで東城君と知り合いなの?」
「『桜影』の復活ライブで、一緒に真琴先輩を応援して。彼も本物の“真琴推し”だったから」
「ふ~ん。凜花って人見知りするタイプかと思ってたけど、やるじゃん」
未侑が言う。
――何か言われると覚悟はしていたけど。
たった三人の友人に詮索されるだけでも息苦しく感じるのに、桜陽の“有名人”だった真琴先輩は、もっとだったに違いない。ファンとしてただ楽しく応援していたつもりだった。でも、真琴先輩にとってはどうだったのだろう。いつも視線を浴び、詮索され続けて……。
そう思うと、申し訳ない気持ちになった。
「そのおかげで、ウチらも男子とライブで盛り上がれて楽しかったし。で、朝陽くんも美形だけど、リードギターの彼もかっこよくない?」
遥香が話を切り替えた。
「えっ、北村くん?」
未侑が驚くと、麻里亜が得意げに言った。
「ダメよ、彼、キーボードの松田さんとできてるっぽかったよ」
「よく見てるよねー。麻里亜こそ気になってるじゃん」と遥香。
――助かった。
友人たちの関心が朝陽からそれたことに、凜花は密かに安堵した。もしかして……朝陽、この展開を予想してた?
まさかね。
凜花がスマホを開くと、朝陽からのメッセージが届いていた。
「行くよ」
すぐに返信しようとしたが、少し指が止まる。今回は、桜陽女子高の「桜影」ファン仲間――小寺遥香、岡崎未侑、山本麻里亜と一緒だ。朝陽は“真琴推し”仲間とはいえ、男子高校生である。彼女たちがどう思うかが気にかかる。
「今回は、学校の友達と一緒なの」
しばらくして、朝陽から返事が来た。
「俺、邪魔かな?」
――察しがいい。
申し訳ない気もするし、朝陽に会いたい気持ちもある。でも、遥香たちがどう思うか……。
返信に悩んでいると、再びメッセージが届いた。
「こっちもバンドメンバー誘って行く。あいつらも『桜影』に興味あるみたいだし、それならいい?」
「……それならいい?」
どういうことだろう。戸惑いながらも聞き返す。
「俺が一人で行くより、俺たちに注目が集まらないんじゃないかって」
――そうかなあ。そんなことない気がするけど……。
ここまで言われて断るのも悪いと思い、覚悟を決めて返信した。
「わかった。一緒に『桜影』ライブで盛り上がろう」
◇◇
ライブ当日、「Beat Cellar」の前で待ち合わせた凜花たちとステラノーツのメンバー。
「はじめまして、東城朝陽です」
朝陽が爽やかに挨拶すると、遥香が驚いたように目を丸くした。
「わっ、本物の男子高校生!」
「遥香、そんなの当たり前でしょ……」
未侑が苦笑し、麻里亜は興味深そうに朝陽を観察している。その横では、リードギターの北村翔とキーボードの松田野々花が談笑しながら、ベースの本川晃、ドラムの猪瀬淳司と合流していた。
最初こそぎこちなかったが、ライブが始まると全員が「桜影」の音楽に夢中になった。真琴のドラムが響くたびに、朝陽と凜花は顔を見合わせ、自然と拳を突き上げる。
ライブが終わり、外に出た。ステラノーツのメンバーと別れた直後、麻里亜が早速聞いてきた。
「やっぱり『桜影』最高! ところで、凜花。なんで東城君と知り合いなの?」
「『桜影』の復活ライブで、一緒に真琴先輩を応援して。彼も本物の“真琴推し”だったから」
「ふ~ん。凜花って人見知りするタイプかと思ってたけど、やるじゃん」
未侑が言う。
――何か言われると覚悟はしていたけど。
たった三人の友人に詮索されるだけでも息苦しく感じるのに、桜陽の“有名人”だった真琴先輩は、もっとだったに違いない。ファンとしてただ楽しく応援していたつもりだった。でも、真琴先輩にとってはどうだったのだろう。いつも視線を浴び、詮索され続けて……。
そう思うと、申し訳ない気持ちになった。
「そのおかげで、ウチらも男子とライブで盛り上がれて楽しかったし。で、朝陽くんも美形だけど、リードギターの彼もかっこよくない?」
遥香が話を切り替えた。
「えっ、北村くん?」
未侑が驚くと、麻里亜が得意げに言った。
「ダメよ、彼、キーボードの松田さんとできてるっぽかったよ」
「よく見てるよねー。麻里亜こそ気になってるじゃん」と遥香。
――助かった。
友人たちの関心が朝陽からそれたことに、凜花は密かに安堵した。もしかして……朝陽、この展開を予想してた?
まさかね。



