推しは王子様だけど、恋したのは隣の君でした

 二人きりになった凜花と朝陽は、少し気まずそうに顔を見合わせた。

 周囲の喧騒が遠くに感じる。

 凜花は胸の奥で鼓動が高鳴るのを感じながら、ゆっくりと口を開いた。

「あの曲……私のために作ってくれたの?」

 朝陽は、少し驚いたように瞬きをしてから、ふっと微笑んだ。

「うん。君に伝えたかったんだ」

 彼の澄んだ声が、冬の冷たい空気の中でやけに温かく響く。

 凜花は息をのんだ。

「私も……」

 言葉が詰まりそうになる。

 でも、今ははっきり伝えなきゃいけない。

「私も、あの歌のように……朝陽と手をつないで歩いていきたい」

 朝陽の瞳が、大きく揺れた。

「……本当に?」

 不安そうに問いかけるその表情が、どこか愛おしく感じられた。

「うん、本当に」

 凜花が頷いた瞬間、朝陽の手がそっと伸び、凜花の手をやさしく包み込んだ。

 じんわりとした温かさが広がる。

 そして、朝陽はふっと微笑むと、そっと額を凜花の額に寄せた。

「これからも、よろしくな」

 至近距離で交わされるその言葉に、凜花の頬が赤く染まる。

 でも、不思議と恥ずかしさよりも、安心感のほうが勝っていた。

 クリスマスのイルミネーションが、二人を優しく照らしていた。

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