夏休みが終わり、再び学校生活が始まった。

 二学期が始まり、一週間ほどたったある日、凜花は遥香とカフェテリアでランチをしていた。

 そのとき、テーブルの上に置いていたスマホが震えた。

 手に取り、画面を開くと、朝陽からのメッセージが届いている。

「学園祭で『ステラノーツ』が演奏するよ。見に来てくれる?」

「東城君から?」

 ――夏祭りの件も花火大会に誘われたこともバレてるし、今更、隠すこともない。

「うん。学園祭で東城君たちのバンドが演奏するから来ないかって。遥香も行く?」

「やめとく。邪魔しちゃいけないから」

「どういう意味よ」

「ふふっ、なんでも」

 遥香が意味ありげに笑う。

「行くよ。楽しみにしてる」

 凜花は返信を打った。

   ◇◇

 十月最初の土曜日、創星学園の学園祭。

 校門をくぐると、受付で記名をし、プログラムを受け取る。

 ――「ステラノーツ」は体育館で十三時から。

 早速、体育館へと向かった。

   ◇◇

 体育館の前には、すでに入場待ちの列ができていた。並びながら開場を待つ。

 やがて中に入ると、舞台の前にはパイプ椅子が並べられ、すでに多くの観客が座っていた。

 凜花は三列目の真ん中付近に腰を下ろし、演奏開始を待つ。

 ふと視線を感じ、周囲を見ると、何人かの女子生徒が肘をつつきあいながらこちらを見ていた。

 ――気のせい……じゃないよね。

 少し居心地の悪さを覚えたが、気にしないように前を向いた。

 ほどなくして「ステラノーツ」のメンバーがステージに上がり、演奏を開始する。

 彼ららしい、明るくポップなサウンドが体育館に響き渡る。

   ◇◇

「ステラノーツ」の演奏が終わり、会場が拍手と歓声に包まれる。

 その直後、一人の女子生徒が凜花の方へと歩み寄ってきた。後ろからもう一人が追いかけてくる。

「あなたね。私たちの朝陽をたぶらかしたのは」

 強い視線が凜花に向けられる。

「やめなさいよ。みっともない」

 追いかけてきた女子が制止する。

 ――私も、こんなことしてたんだ。

 胸の奥がチクリと痛む。怖いとか憎いとかの感情は、不思議と湧いてこなかった。

 最初の女子生徒は、もう一人に腕を引かれ、その場を離れていく。

 彼女の肩が、わずかに震えているように見えた。