――――――…………
――――……
「ま、こんなもんですかね」
髪が乾かし終わったのか、冷風をさっとかけて、カチリとドライヤーが止まる。
「………………」
「あれ? もしかして、乾かし終わってないところがありましたか?」
言葉だけでは親切に聞いてくれているようだが、無言の葵に、ただ彼は口角を上げていた。
「今日はきちんと寝てくださいよ? 明後日、そんな体調が悪げな顔でどうするんですか。最期ぐらい、せめて顔色はよくしてくださいね」
ドライヤーのコードをぐるぐると巻き付けながら。
「ご飯も食べてないでしょう。今日は私が無理矢理でも食べさせますからね。当日倒れられたら困ります」
「……れんくん」
「……なんですか。あ、効きました? あの花言葉」
「ありがとうっ!!」
「はい!?」
しかし葵は、思い切りレンに抱きつ……いや、体当たりした。
そんな葵の突拍子もない行動に、レンはもちろん受け身を取ることができず、思い切り尻餅をついた。とっても痛そうな顔をしている。
「いった~。……なんなんですか!」
「え? お礼?」
「お礼だからって飛びついてきて!? 相手を痛い目に合わせるんですかあなたはー!」
「あ。レンくんが怒ってる~」
葵はレンの上で、嬉しそうににこにこしていた。
その異常な軽さに、レンは舌打ちをした。
「……もうやめてくださいよ。ちゃんとご飯を食べてください。つまんないからって、家に来る野良猫とか野良犬とか鳥に餌あげたり、戯れたりしないでくださいよ。動物使いか何かですかあなた」
「おー! かっこいい! なれるかな?」
「ならなくていいです」
レンは掴んだ葵の手首の細さに、冷たさに目を見開く。
「……いつから、食べてないんですか」
「え? ……いつだろう?」
「どうせ、私があなたの付き人になってから、まともに食べてないでしょう」
「まあショックだったしね。でも! レンくんのせいじゃないからね? 元はと言えばわたしのせいで」
「わかっているならいいです」
レンは葵の脇に手を突っ込んで、ベッドの上に座らせる。
「ほんと、あなたのせいで私の人生はめちゃくちゃです」
「………………」
「あなたのせいで会社は潰れるわ。道明寺に取り込まれるかと思ったら、取り込まれずに亡霊のように潰されたはずの月雪はまだ残ってるわ。いい具合に跡取りだった私もこき使われるわ。……もう、散々です。なんであなたなんか産まれたんですか。人に害しか与えないあなたの何がいいのか、生徒会の皆さんも、事情を知れば遠退いていってしまうでしょうね」
「………………」
「あなたが消えた時は、必ず私の方からあなたの今までのしてきたことは伝えてあげますので。どんな反応を示すのか、楽しみですね」
「………………」
「あなたのことなんか何にも知らない皆さんはきっと、今頃新入生歓迎会を盛り上げるために、一生懸命動いているでしょうね」
「………………」
「あーそういえば、あなたの案が選ばれたんでしたね。私のロシア案は、やっぱり人気がなかったみたいですね。まあ寒いですし」
「………………」
「あなたが学ばされに行ってた、『そういう学校』の観光なんて楽しそうじゃないですか。どんなことを学んだんですか? 人の殺し方? スパイ? 暗殺? 警察の内情なんかも教えてもらったんですかね?」
「………………」
「そういうことには興味があったので。だって、どうやったらあなたを殺せるか、知りたいじゃないですか」
「………………」
「学校自体の行事はあったみたいですし、あなたが日本から来たからって、浴衣を着たりしていたんでしょう? 楽しかったですか? 向こうの体育祭は」
「………………」
――――……
「ま、こんなもんですかね」
髪が乾かし終わったのか、冷風をさっとかけて、カチリとドライヤーが止まる。
「………………」
「あれ? もしかして、乾かし終わってないところがありましたか?」
言葉だけでは親切に聞いてくれているようだが、無言の葵に、ただ彼は口角を上げていた。
「今日はきちんと寝てくださいよ? 明後日、そんな体調が悪げな顔でどうするんですか。最期ぐらい、せめて顔色はよくしてくださいね」
ドライヤーのコードをぐるぐると巻き付けながら。
「ご飯も食べてないでしょう。今日は私が無理矢理でも食べさせますからね。当日倒れられたら困ります」
「……れんくん」
「……なんですか。あ、効きました? あの花言葉」
「ありがとうっ!!」
「はい!?」
しかし葵は、思い切りレンに抱きつ……いや、体当たりした。
そんな葵の突拍子もない行動に、レンはもちろん受け身を取ることができず、思い切り尻餅をついた。とっても痛そうな顔をしている。
「いった~。……なんなんですか!」
「え? お礼?」
「お礼だからって飛びついてきて!? 相手を痛い目に合わせるんですかあなたはー!」
「あ。レンくんが怒ってる~」
葵はレンの上で、嬉しそうににこにこしていた。
その異常な軽さに、レンは舌打ちをした。
「……もうやめてくださいよ。ちゃんとご飯を食べてください。つまんないからって、家に来る野良猫とか野良犬とか鳥に餌あげたり、戯れたりしないでくださいよ。動物使いか何かですかあなた」
「おー! かっこいい! なれるかな?」
「ならなくていいです」
レンは掴んだ葵の手首の細さに、冷たさに目を見開く。
「……いつから、食べてないんですか」
「え? ……いつだろう?」
「どうせ、私があなたの付き人になってから、まともに食べてないでしょう」
「まあショックだったしね。でも! レンくんのせいじゃないからね? 元はと言えばわたしのせいで」
「わかっているならいいです」
レンは葵の脇に手を突っ込んで、ベッドの上に座らせる。
「ほんと、あなたのせいで私の人生はめちゃくちゃです」
「………………」
「あなたのせいで会社は潰れるわ。道明寺に取り込まれるかと思ったら、取り込まれずに亡霊のように潰されたはずの月雪はまだ残ってるわ。いい具合に跡取りだった私もこき使われるわ。……もう、散々です。なんであなたなんか産まれたんですか。人に害しか与えないあなたの何がいいのか、生徒会の皆さんも、事情を知れば遠退いていってしまうでしょうね」
「………………」
「あなたが消えた時は、必ず私の方からあなたの今までのしてきたことは伝えてあげますので。どんな反応を示すのか、楽しみですね」
「………………」
「あなたのことなんか何にも知らない皆さんはきっと、今頃新入生歓迎会を盛り上げるために、一生懸命動いているでしょうね」
「………………」
「あーそういえば、あなたの案が選ばれたんでしたね。私のロシア案は、やっぱり人気がなかったみたいですね。まあ寒いですし」
「………………」
「あなたが学ばされに行ってた、『そういう学校』の観光なんて楽しそうじゃないですか。どんなことを学んだんですか? 人の殺し方? スパイ? 暗殺? 警察の内情なんかも教えてもらったんですかね?」
「………………」
「そういうことには興味があったので。だって、どうやったらあなたを殺せるか、知りたいじゃないですか」
「………………」
「学校自体の行事はあったみたいですし、あなたが日本から来たからって、浴衣を着たりしていたんでしょう? 楽しかったですか? 向こうの体育祭は」
「………………」



