すべてはあの花のために⑦


「今のことは、()にもきちんと話はしてるからな」

「………………」

「それから、もう学校には行かせない。これからは娘にたくさん働いてもらわないといけないからな。まあ急だと何かしら勘繰られるだろうから、お情け程度。4月いっぱいまでは登校させてやろう」

「……。わかり、ました」


 アザミが、手の甲で葵の顔をベチベチと叩く。


「だが、あそこをSクラスで卒業したという証明は欲しいな。海棠に言っているんだろう? 願いを」

「……。っ、はい」


 ケタケタと、楽しそうにアザミが嗤うのに、みんなもつられて嗤う。


「その証明を渡さないと言われれば、一人ずつお前の友人を始末しよう」

「……いえ。きちんともらってきます」

「そうか。それならいいだろう。……ま、援助自体は来年の3月1日の卒業と同時になるから、それまでは我慢しなければならないだろうが」

「………………」

「いやあ楽しみだ。あの海棠がこちら側に手を貸すとはな。……海棠も桜も、これでもう落ちぶれるな」


 そんなのもう、こちら側が落ちぶれていると言っているようなものだ。
 ……ま、その通りか。あんなことをしていれば、落ちぶれるさ。それがバレないように、葵の頭が必要なのだから。


「あと、明日からレンがお前の付き人になる」

「……はい」

「付き人とは名ばかり。目的はお前の監視だ。この一ヶ月、道明寺葵としてきちんと過ごせ」

「……はい」

「お得意の仮面か? あれでも着けていろ。まだそちらの方がいい。それから、今までのことを誰かに漏らしてみろ。お前の友人の命はないと思え」

「はい」


 被せるほどの返事に、アザミは満足そうに嗤った。


「ぼくとコズエさんからも、あなたに条件を出しますう」

「……?」


 急にカオルが割り込んでくる。


「九条日向さんは、こちらの事情に深く関わりすぎましたあ。と言ってもお、お手伝い程度ですし、あなたの情報をこちらに回してもらうぐらいでしたがあ」

「……なん、ですか」


 葵は、嫌な予感しかしなかった。そんな葵の様子を、カオルは楽しそうに見ていた。


「一番最初に殺すのは彼にします。彼から何か情報が入れば、即刻抹殺したいと思うので。気をつけてくださいねえ?」


 迷いは、なかった。もう、仮面を着けることも、決めた。
 ……彼に、情報が漏れてしまわないようにしようと。そう覚悟を決めたんだ。