「今のことは、娘にもきちんと話はしてるからな」
「………………」
「それから、もう学校には行かせない。これからは娘にたくさん働いてもらわないといけないからな。まあ急だと何かしら勘繰られるだろうから、お情け程度。4月いっぱいまでは登校させてやろう」
「……。わかり、ました」
アザミが、手の甲で葵の顔をベチベチと叩く。
「だが、あそこをSクラスで卒業したという証明は欲しいな。海棠に言っているんだろう? 願いを」
「……。っ、はい」
ケタケタと、楽しそうにアザミが嗤うのに、みんなもつられて嗤う。
「その証明を渡さないと言われれば、一人ずつお前の友人を始末しよう」
「……いえ。きちんともらってきます」
「そうか。それならいいだろう。……ま、援助自体は来年の3月1日の卒業と同時になるから、それまでは我慢しなければならないだろうが」
「………………」
「いやあ楽しみだ。あの海棠がこちら側に手を貸すとはな。……海棠も桜も、これでもう落ちぶれるな」
そんなのもう、こちら側が落ちぶれていると言っているようなものだ。
……ま、その通りか。あんなことをしていれば、落ちぶれるさ。それがバレないように、葵の頭が必要なのだから。
「あと、明日からレンがお前の付き人になる」
「……はい」
「付き人とは名ばかり。目的はお前の監視だ。この一ヶ月、道明寺葵としてきちんと過ごせ」
「……はい」
「お得意の仮面か? あれでも着けていろ。まだそちらの方がいい。それから、今までのことを誰かに漏らしてみろ。お前の友人の命はないと思え」
「はい」
被せるほどの返事に、アザミは満足そうに嗤った。
「ぼくとコズエさんからも、あなたに条件を出しますう」
「……?」
急にカオルが割り込んでくる。
「九条日向さんは、こちらの事情に深く関わりすぎましたあ。と言ってもお、お手伝い程度ですし、あなたの情報をこちらに回してもらうぐらいでしたがあ」
「……なん、ですか」
葵は、嫌な予感しかしなかった。そんな葵の様子を、カオルは楽しそうに見ていた。
「一番最初に殺すのは彼にします。彼から何か情報が入れば、即刻抹殺したいと思うので。気をつけてくださいねえ?」
迷いは、なかった。もう、仮面を着けることも、決めた。
……彼に、情報が漏れてしまわないようにしようと。そう覚悟を決めたんだ。



