すべてはあの花のために⑦


「――――」

「……? ひなた、くん……?」


 目を見張った彼が固まったのは、ほんの一瞬。次の瞬間には葵の腰に腕を回し、頬に滑らせるように手を添えた。
 その触り方がくすぐったくて、葵の体が小さくはねる。


「…………」

「ひ。……ひなた。くん……?」


 熱っぽい視線に見つめられ、逃げられない。


「……呼んで?」

「っ。え……?」

「なまえ。……呼んで? オレの、名前」

「……ひなた。くん?」

「もう一回」

「ひなたくん」

「もっと」

「ひなた。くん」


 名前を呼ぶ度、彼の顔が近くなってくる。


「うん。……もっと」

「……ひなた、くん……」

「うん。……あおい」

「……!!」

「呼んで」

「ひ、……。ひなたくん」

「あおい」

「ひなた……。くん」


 もう、目の前。近すぎて見えないくらい、視界いっぱいに広がって。


「……あおい」

「……ひなた、くん……」


 お互い、そっと小さく名前を呼んだあと。ゆっくり瞳を閉じた――。