苛ついた声でそう言ったかと思ったら、おでこにちゅっとキスをされた。
「え? え……?」
「次。キサは? どうしたの? なんでこんなことになったの」
一人平気な顔をして、また葵を抱き締めながらそう言うヒナタに、葵一人軽いパニックを起こしていたけれど。
「き、きさちゃんは。……口紅、くれた」
「ああ、さっきつけてたね。……ま、似合ってるけど、オレ的には普通にリップだけで十分」
ヒナタは葵の唇をつんつんと指で突いてくる。
「え? ……ひ、ひなたくん」
「……やっば。無理無理。そんなん吹っ飛ぶわーまじ」
そして何故かぎゅうっと抱き締められた。
「ふ、吹っ飛ぶ……?」
「キサはなんて?」
「え? ……キサちゃんは、ヒナタくんと喋ってやってって」
「え」
「キサちゃんだけじゃなくて、アカネくんとアキラくんも、月曜日にそう言ってきてくれたの」
「…………」
「そして半ば強引にこんな事態に。……あー。まあ、もう遅いけど」
「だから何? 遅いって。気になるんだけど」
「え? だから、わたしはヒナタくんとは最後まで話すつもりはなかったってことだけど」
「……うっわ。お礼言っとこ、三人に」
彼らがいないと、葵は自分と話してくれなかったのかと思うと、ぞっとした。
「ふふ。まあ、それだけじゃないんだけどね?」
「は? ……何。教えてよ」
「これは言えませーん。絶対に言えないことでーす」
「……いや、絶対言おうと思ったら言えるでしょ。ほら言いなよ」
「ダメ! これは絶対に言えないの!」
「(なんでそんなに頑ななの? しかも、何か楽しそうなんだけど……)」
まあいっかと、ヒナタは改めて三人にお礼を言うことにした。
「はい。それじゃあ最後」
そう言ってヒナタは、こつんとおでこを当ててきた。
「え?」
「オウリ。……なんて言われた」
まるで地獄の底から這い上がってきたみたいな。声のトーンが恐ろしく低かった。
「え、えっと。……手が、冷たかったから温めてくれて」
「それじゃあオレも温める」
「……えっと。ち、ちかくない……?」
「早く言わないともっと寄るよ」
恥ずかしさに、一気に顔が熱くなる。
「えっと。……行っちゃやだって」
「行っちゃやだ」
「え? ひ、ひなたくん……?」
「続けて」
「……か、彼氏になれなくてもいいって。寂しいって」
「いや、どうして彼氏とかの話が出るの……」
「そ、それはオウリくんに聞いてください」
「……それから?」
「……自分が、わたしを見つけたのにって」
そう言うと、握られてる手が一段と強く握られた。
「いっ。……い、いやだって。自分が、治すからって。言って……」
「それで? キスして欲しそうな顔してたんだ」
「え? ちょ、え? ひ、ひなたくんっ」



