すべてはあの花のために⑦


「つ、つぎは。……あー」


 言いたくない。言ったら絶対『下僕のくせに、兄貴の横に結婚式に並ぶとかいい度胸』って言われる。


「……ツバサは? なんて言ったの」

「あーうん。……け、化粧を。少々……」

「それから?」

「……っ」

「……うわ。思い出して赤くなってるとかキモ」

「だ。……だって」

「なんて言われたか、オレが言ってあげよっか」


 でも、みんなには聞こえていなかったはずと思っていると、耳元でそっと囁かれた。


「……あんたがすき」

「――!!」

「なんで休むの。オレのそばにいてよ。ずっと」

「……っ、ひ。ひな……っ」

「絶対あんたをあそこから助けてあげる」

「ちょ。……ほんと、やめっ」

「あれ? 違う?」

「…………。ち、ちがう。く、ない……っ」


 真っ赤な顔で俯く葵を、満足そうにヒナタは見つめていた。


「だと思った。兄貴の考えてること、大抵わかるんだよね」

「そ、そうですかっ(……その兄貴は結婚まで言ったけどね)」

「次…………は飛ばして。アカネは?」

「……飛ばす?」

「うん。あれは最後」

「……月曜日は、カオルくんのこと聞かれた」

「何聞いたの?」

「……ごめんね。言えない」

「言いたくないんじゃなくて?」

「……りょ、両方。かな」

「そ。いいよ。……さっきは?」

「……皆さんに、よろしくって。お茶しましょうって」

「それから?」

「……帰ってきたら、お話ししたいことがあるからって、伝えてもらうことにした」

「……? 何を?」

「……言いたく、ない」

「そっか。わかった」

「チカく…………あー。彼もすっ飛ばして」

「チカは? なんて?」

「(くれないのね……)寂しくない? って聞いたの」

「……そう」

「チカくんのご両親にも、フジカさんにも会わせてねって」

「うん。それで?」

「……ツンデレが恋しい」

「は?」


 葵は、本当に大きなため息をついた。


「わたしのせいでツンデレがなくなったとか、こんなに積極的になったんだーとか何とか言われて、散々だった」

「…………」

「でも、ちゃんとわかってくれるって。絶対嫌いにならないって。……そう言って頭ぐしゃぐしゃにされた」


 するとヒナタは、葵の目の前に顔を持ってくる。


「え? ひな」

「抜けてる」

「え? ちょ、ちか……っ」

「こうされてる時あったでしょ」

「……!!」

「あんた目、つむった。……どういう意味か、わかってんの? ねえ」

「え? ご、ごめんなさい?」

「わかってないのに謝んなよ」