すべてはあの花のために⑦


 オウリにがっちり頭を掴まれて、みんなの前で口づけをされた。


「オウリ!」

「何してんだよ!」

「だってえ~。あーちゃんがキスしてくれって顔してたあ~……」

「はいー!? してないんですけど!!」


 葵はみんなの前で唇を奪われてしまった恥ずかしさに顔を真っ赤にしていたのだけど、どうやら勘違いされたらしい。みんなが白い目で葵を見てくる。


「えー……。違うのに。何故やられ損……」

「へへ~。ごちそうさま、あーちゃん?」

「あ。誰でしたっけ」

「えー! なんで!?」

「勝手に人に罪をなすりつけたくせによく言うー」

「ごめんってば! だってあーちゃん可愛いんだもん! 綺麗なんだもん! ちゅーしたくなったんだもん!!」


 オウリがそう言ったら、みんなの白い目の矛先がオウリに変わった。


「帰ってきたら、これ以上のことしてあげるからね? 楽しみにしてて?」

「……ははは」


 オウリと入れ替えに、アカネが来てくれた。


「一週間ってあっという間だね。この間話したのに」

「うん。……アカネくん。連絡待ってるね?」

「……うん。ごめんね。まだわかってあげられなくて」

「ううん。大丈夫だよ? 楽しみにしてるんだから」

「……ありがと。頑張るからね」


 ふわり、お互いが笑い合う。


「皆さん、お元気?」

「え? ……うん。あおいチャンがお休みするんだって言ったら、寂しがってたよ」

「そっか」

「お茶しようねって言ってからできてなかったから、帰ってきたら、声掛けて? って言ってたよ」

「うん! 絶対お茶する! ナズナさんとは意気投合する自信しかない!」

「ははは……」

「あとね、お話したいこともあるんだ」

「え? そうなの? 伝えよっか?」

「……ううん。帰ってこられた時に、わたしの口からお話したいから」

「……そっか。じゃあ、首を長ーくして待ってて、って伝えておくよ」

「うんっ。ありがと」


 彼の表情がよくわかる。そんな彼の、くしゃっとした可愛らしい笑顔に、葵もつられて笑顔になった。


「……アオイ」


 やっぱり彼は、最後まで寂しそうに。悲しそうに名前を呼ぶ。


「……チカくん? もう、寂しくないですか?」

「は? ……さみしい」

「いやいや。……お父様とお母様と、きちんとお話しました?」

「それは、……したけど」

「……帰ってきたら、わたしもお二人に会わせてくださいね。もちろんフジカさんにも」

「……ああ」


 俯いている彼が、一体何を思っているかなんて、想像はついている。


「大丈夫です。……チカくん? 絶対に帰ってきます。楽しみにしててください」

「オレが。治してやりたい」

「……それじゃあ、シントから聞いたこと。頑張ってください」

「……! ……そっか。アキから聞いたのか」

「はい。楽しみに待ってますね?」

「…………さっきさ」


 小さくそうこぼしたチカゼが、そっと葵の腰を引いてくる。


「えっ。ち、ちかくん……?」

「……何勝手にオウリなんかにキスされてんだよ」

「わ、わたしは無実です……!」

「わかってるよ。……ただムカついただけだ」


 葵の唇を、すっとチカゼの親指が撫でる。


「オレが、体に覚えさせてやるって言ったのに」

「いやいや……! け、結構なので……!」

「お前はよくてもオレがダメなんだって。お前の感触を、オレの体が覚えてっから、もう離れらんねえ」

「……!? つ、ツンデレを返して……!」

「無茶言うな。こんなんにしたのはお前だろ」


 チカゼの顔が、ぐっと寄ってくる。葵は反射的にギュッと目をつむった。