耳元で囁かれる甘い言葉に、思わず腰が抜けそうになる。けれど、それを先回りしてちゃっかり腰に腕が回っていた。
「お前がどう思ってても、俺はもう知らない」
「……へ?」
「たとえお前が、あいつらと家族になりたいって本気で思ってたとしても、そんなの俺が嫌だからさせねえよ」
「……つばさくん」
「あんな家に大事なお前をやるわけねえだろ。だから待っとけ」
「……ははっ。そっかそっか。ありがとうツバサくん」
にっこり笑う葵にとうとう我慢できなくなったのか、ツバサが葵の後頭部に手を差し込んで引き寄せようとしたところで。
「そこまでー!!」
「ぐはっ!!」
ヒナタの次はツバサが標的なのか、オウリが攻撃してきた。
「つっくん! キモい!」
「はあ?!」
「やり過ぎは引かれるよ! 引かれたくなかったらこの辺で引いてください!」
「……へーい。それじゃ葵? 待ってるから、いつでも連絡しろ」
ツバサが投げキッスをかましてきたが、葵はそれを華麗に避けた。
「あ、危なかったよオウリくん。元オカマは強力だね」
「ほんとほんと! キモいよね!」
「いや、流石に傷つくから……」
オウリは、葵の手をぎゅうと握って離さない。
「あーちゃん。やっぱり冷たい……」
「オウリくん……」
「今だけでも、温めてあげるからね」
「うん。ありがと」
ムギュムギュと言いながら、オウリはにこにこ笑っていたんだけど、だんだんそれも歪んでくる。
「……っ。いっちゃ。やだ……」
「おうりくん……」
「あーちゃんの彼氏になれなくてもいい!」
「へ?」
「でも、いなくなんないでよ。寂しいよお……」
「……帰ってくるよ? 大丈夫」
「でもいつかわかんない。連絡も取れないかもしれない。……おれが。あーちゃんを見つけたのにっ」
そう言ってオウリは、葵の首元に抱きついてくる。
「いやだ。……いやだいやだっ」
「……ありがと。でも、わたしも冷たいままなのは嫌だから」
「おれが。おれらが治す。……お家なんて。あてにならないじゃん」
「……大丈夫。きっと治るよ」
「そんなの、……わかんないじゃん」
「……だったらカード。わかって?」
「……?」
「わかったら教えて? そのあとシントから日記をもらって? それをわかって? ……わたしの冷たいの、治してね? 待ってるからね?」
「……あー、ちゃん……?」
「家とどっちが早いか、競争だね?」
ふっと腕を緩めたとこから見えた葵の笑顔が、あまりにも綺麗だった。
「オウリくんは賢いから。きっと、お家なんかよりも早く治して――っ、んんっ!?」



