すべてはあの花のために⑦


「(……あ、れ……? 今アオイちゃん、……お礼、受け取ってくれた……?)」

「もうっ。あれは片付けるのにも気持ちが悪くてしょうがない! ……あ。いっそのことカナデくんを燃えるゴミに出したら万事解決?」

「いやいや! ゴミで出すのはやめてー!」

「ははっ。冗談冗談。これからはちゃんと話してくださいね? もう、間を取り持つのは懲り懲りです……」

「はい。すみません……」

「……カナデくん」


 葵はカナデの頭に両手を伸ばした。カナデは、最初は何かわからなかったけど、小さく笑ったあと腰を屈める。


「わしゃわしゃ~!」

「わー。折角セットしたのにー」

「……好きって言ってくれて、ありがとね?」

「……え?」


 それは、本当に小さな小さな声。


「ちゃんとしたお返事は元気になったらするつもりだけど、帰ってくるまでに好きな子できたら、報告してね?」

「……俺は、アオイちゃんだけでいい」

「ありがと。だから、今はごめんなさい。……あは。よく考えたらカナデくんのこと、めっちゃ振ってるね」

「やっぱり俺の扱い……」

「わたしがいない間、お仕事頑張ってね? 取り敢えずは新歓だ!」

「……うん。任せてよ」


 カナデも葵に抱きついて「ぎゅー!」と言ったあと、すぐ離れたと思ったら、ほっぺにちゅーしてきた。


「……!?!?」

「アオイちゃんが可愛いのが悪いー」


 そう言ってカナデはツバサとタッチ交代した。


「あーあ。汚くなった」

「え!? ……つ、ツバサくん。痛い……」


 ゴシゴシと、どこからもって来たのか、ウェットティッシュで葵のほっぺを拭くツバサ。


「……え。悪い、化粧してた?」

「あ、ちょっとだけね? 気にしないで?」


 ティッシュについたファンデを見て、ツバサはキサに目配せした。


「悪い、すぐ直すからな」

「え?」


 ツバサはキサに借りて、拭き取ってしまったところを直してやる。


「え? もう帰るだけだから大丈夫だよ?」

「俺がしてあげたいから、ちょっと待ってて」


 近い距離に、ツバサが腰を曲げて葵に化粧をする。


「……なあ」

「……? な、何?」

「ちゃんと言ってなかったから、もう一回、改めて言っとく」


 ツバサは、葵の耳元に唇を寄せる。


「……お前が好きだよ」

「……!!」

「なんで休むんだよ。いなくなんなよ。俺のそばにいろよ。やっとお前に踏み込めるようになったのに」

「つ、……つばさ、くん……」

「運命。……絶対断ち切ってやるから」

「……うん」

「だから、安心して待ってろ。必ず、あそこから助けてやる」

「……え? でも。わたしあの人たちと家族になりたくて……」

「は? させねえよ。お前は、俺と家族になればいい」

「――!!」

「着させてやる絶対。俺の隣に、絶対立たせてやる」

「……。つばさ、くん……」