すべてはあの花のために⑦


 それから雑談をしたあと、葵はレンと一緒に帰って行った。
 次の日も、その次の日も、葵が学校に遅れてくることはなくなった。どうしたのかと尋ねられ、「みんなと少しでも一緒にいたいから」と答えると、みんなは嬉しそうな顔で笑ってくれた。

 放課後はしおりをみんなで作りながら雑談ばかりしていて、なかなか仕事は進まなかったけど。でも、とても楽しかった。
 なんとな~くできたのが木曜日。それをみんなで確かめてたら半端なく誤字脱字が多すぎて面白かった。
 修正を金曜日にした。そしてやっと完成した新歓のしおりを印刷して、原本を葵にくれた。


「え? ……いいの?」

「そんなので喜んでくれるんだね、あーちゃん」

「だって嬉しいよ! お休み前のお仕事したって記録だもん!」

「……早く、帰ってこいよ」

「うん! ありがとうツバサくん」


 あっという間に日にちは過ぎ、今日は葵が休む前の最後の登校日。
 みんなが一人ずつ、声を掛けてくれる。


「葵……」

「アキラくん? わたしがいないからって、甘いもの、食べ過ぎないようにしてね?」

「早く帰ってこないと、葵のいない寂しさとか、イライラを甘いものを食べて軽減する」

「本気で早く帰ってこないといけないじゃないか」

「……いつ頃になるんだ? 手術とかになるのか?」

「え? いえいえ。ハッキリわかってはいないので、精神的なものじゃないのかと言うことで、しばらくは静かなところに行くんです」

「……だったら本当にいつ頃になるかわからないな」

「……そうですね。すみません」

「ついでに頭も治してこい」

「え」

「ちょっとおかしいとこがあるからな。もう鼻フック一本背負いも封印しよう」

「それはアキラくんが暴走しなかったらしませんよ。その前にあなたの甘い物好きも治して欲しいんですけど」

「それは要相談です」

「いや誰と!?」


 コントが始まってしまったが、どこか葵を見るアキラの瞳は寂しげだ。


「……ちゃんと、わかるから」

「……はいっ」

「いつまでこっちに?」

「GWまでは?」

「また連絡する」

「はい! 待ってますね」


 そして最後にぎゅっと抱き締められてしまったが、すごく小さな切ない声で葵を呼ぶ声が聞こえたので、そっと背中をやさしく撫でてあげた。


「シランさんにも、カエデさんにも、シントにも、サクラさんにも、よろしく伝えてください」

「……っ、ああ」

「今生の別れじゃないですよ? 皆さんでサクラさんのお墓参り、行ってあげてくださいね」

「……葵も。一緒にだ」

「はい! もちろんです! 待っててくださいね」


 ふっと体を離し、アキラは葵の頭を最後、ぽんぽんと撫でた。


「……アオイちゃん」

「カナデくん? ちゃんとお家、帰ってますか?」

「え?」

「シオンさんと、マサキさん。それから五十嵐組の人たちに、カナデくんの元気な姿、見せてあげないとダメですよ?」

「……うん」

「それからユズちゃんにも。バレンタイン、キサちゃんから受け取ったでしょ? ユズちゃんからのチョコ」

「……うん。ユズちゃん、進んだんだなって思った」

「うん! それはカナデくんを見て、自分も変わりたいって思ったんですよ。よかったね」

「ううん。俺が変われたのはアオイちゃんのおかげだから。だから、ユズちゃんが変われたのは、アオイちゃんが俺を変えてくれたからだよ」

「……そう言ってくれてありがとう。でもエロ本はやめなさい!」


 ビシッと指を指されて、カナデは顔が引き攣ってしまう。