すべてはあの花のために⑦


「え。どうした葵。お腹痛い? それとも気持ち悪い?」


 アカネと交代で入ってきたアキラが、しゃがんで葵の背中を摩ってくれている。


「大丈夫っす。改めて今、リスク確認を終えたとこなだけです……」

「??」


 アキラは首を傾げているが、普段の葵を見られて嬉しいのか、少し頬が緩んでいた。


「葵? 少し話してもいいか?」

「うん。もちろんだよ」


 椅子に腰掛け、アキラが話し出す。


「今のお前には、ちゃんと知っておいてもらった方がいいと思ったから話す」

「……うん。何をかな?」

「葵が、シン兄宛に送った大荷物。あれに日記が入ってたって、みんな知ってる」

「……みんな、って……?」

「生徒会メンバー。月雪を抜いて。それと杜真。でもそれはまだ見させてもらえてない」

「……シント、なんて?」

「葵からバレンタインの時にもらったカード。あれについてわかったら、葵と話をしろって。それで、もっと葵のことがわかったら、その日記を見せてもらえることになっているんだが……」

「ただでは見せられない、って感じかな?」

「シン兄は、その日記にも細工したらしい。だから、俺らはまずはカードを理解して、お前と話して、お前を理解してやらないと、お前の根本をわかってやれない」

「根本って……」


 アキラは不安げな葵の手をぎゅっと握る。


「葵。願いを叶えてくれて、ありがとう」

「……!!」

「みんな知ってるよ。でも、お前は受け取らないだろうから、俺は無理矢理言っただけ。みんなを代表してのお礼」

「……わたし、は……」

「何か理由があるから、お礼を受け取れないんだってことも知ってる」

「え」

「その根本が日記に書いてあるからって、シン兄が言ってたんだ。……俺らみんな、お前のことをわかってやりたいから頑張るよ。それは、お前に無視されてるあいつも一緒」

「…………」

「……葵。何があった。お披露目式あとからおかしいぞ」

「…………」

「……言えない?」

「言う価値もない」

「え」


 葵の顔には、般若が貼り付けられていた。


「……あいつも、お前に悪いことしたっていうなら謝りたいのかもしれない。休む前に一言、声を掛けてやってくれないか」

「…………」

「(駄目、か。……茜、やっぱりダメだった)」


 扉の外で、ちょっと引き継いで説得を頼まれたが、どうやら無理っぽい。


「(これは新たにみんなと、二人の仲直り計画を立てた方がいいかもしれないな……)」


 取り敢えずヒナタのことは後回しにして、アキラは話を続ける。


「あれからシン兄の閉じこもりっぱなしはなくなったけど、やっぱり何かしてるみたいなんだ。……心当たりあるか?」

「え? ……いや、わたしはシントに日記を渡して、最後のお仕事を頼んだだけだから、何をしてるかまでは……」

「その最後の仕事って何だ?」

「ん? みんなに、日記を見せたくなかったんだけど、でも見て欲しくもあるから、その矛盾をお願いしたの」

「……全く意味がわからないんだが」

「それからきっと、シントはいろいろ調べてるんじゃないかなとは思うよ?」

「……それは、葵の知らないところをか?」

「あ。それも言ったんだ、シント」

「それがなんなのか、俺らはそれを探すまでに至ってもないけど」

「大丈夫。信じてるからね?」