すべてはあの花のために⑦


 涙を浮かべながら、アカネは不安そうな顔だ。


「アカネくん? 頑張って。頑張ってね?」

「あおいチャン……」

「折角変えられた夢を諦めないで? みんなやさしいから、きっとアカネくんの進む道、応援してくれるよ」

「……っ、あおいチャン」

「応援してるよ? どこにいたって。だって、わたしの家族だもん」

「……あおいチャン……。っ」

「おーよしよし。わたしのこの胸でよければ貸しましょうー」

「……!? そ、それは。……もうちょっと段階を踏んでからで……」

「え? どうした? アカネくん??」


 アカネは慌てて体を離して、扉の方へと駆けて行く。


「あ、あおいチャンはっ、そういう無自覚も。治した方がいいと思う……!」

「……治すも何も、元からこれなんだが」

「だったら矯正してくださいっ!!」

「えー……」


 そんなことを言いながら、二人はクスッと笑う。


「時間ないけど、今週までいっぱいお話しようね?」

「お手柔らかに?」

「カードも、わかったら教えてね?」

「休みに入ったらなかなか連絡はつかないかもしれないから、今週までに頑張ってね~」

「え!? 聞いてない!」

「なるべくお早めにお願いしまーす」

「努力しまあす。……あおいチャン」

「ん? なに――」


 近くまで歩いてきていた葵の腕を取って、アカネはぎゅっと抱き締める。


「早く、帰ってきて」

「……うん」

「超特急だよ? じゃないとみんな、とーまクンになっちゃう」

「……う、うん」


 葵の頭の中を、トーマ=ストーカーの式が駆け巡った。


「みんなあおいチャン大好きだからさ? もちろん、あおいチャンがわざとスルーしてる彼も」

「…………」

「何があったのかは聞かないけど、話してあげて? 寂しそうだからさ」

「…………」

「(だめか……)あおいチャン。何かあったら連絡してね? かおるって奴、ぶっ潰しに行くから」

「アカネくん……」

「それぐらい、あおいチャンがおれらも大切なんだ。あおいチャンがおれらのこと、思ってくれている以上に」

「……はは。うん。ありがと」

「……あおいチャン」


 アカネは葵の額に、やさしく唇を寄せた。


「そろそろあきクンと代わらないといけないのか。代わりたくないけどおー」


 そう言ってアカネは体を離した。


「それじゃあ、タッチ交代してくるね~」


 アカネは扉から出て行ったけど……。


「うわ~そうだ。仮面外したら、こっちのリスクも高くなるんだったわ……」


 葵は真っ赤な顔を押さえて、しゃがみ込んでいた。