すべてはあの花のために⑦


 それからいろいろと話をしていたけれど、アキラとアカネに葵が呼ばれたので、少しだけ席を外した。


「あきクン、ちょっとだけおれが先にあおいチャンと話してもいい?」

「わかった。部屋の前にいるよ」


 葵たちは、会議室へと移動した。


「流石アカネくん。わかっちゃったよね~」

「あおいチャン――」


 アカネは葵の襟を取って、足を払う。


「……!? アカネくん?!」


 そのあと押さえ込みを掛け、至近距離で話をする。


「……あおいチャン、こんなに弱くなかったはずなのに」

「い、いきなりだったから何も対処できなかったんだし」

「嘘。わざと掛けられたでしょ。……何? 罪悪感?」

「久し振りに技かけられてもいいかなって思っただけだし……ていうか、近い!」

「わかった。そういうことにしておいてあげるから、このまま聞いて」

「し、心臓もたないって~……」

「あ。久し振りに赤いね。可愛い」

「……!! や、やめてくれっ……」

「はいはい。それじゃあ、あきクンも後に控えてるから直球で聞くけど」


 アカネは葵の耳元に顔を寄せ、小さな声で囁く。


「かおるって奴でしょ。体育祭の時、あおいチャンを変にしたの」


 低い声に、葵の体がビクッと反応する。


「あいクン? は、さっき知らなかったってあおいチャン言ってたけど、かおるって奴は、体育祭の時からあおいチャンのこと、知ってたんじゃないの」

「……アカネくんは、名探偵になれるね」

「おれは真面目に聞いてるんだ。……それからあいつは、ミスコンにも出ろって言ってきたよね。申し訳ないけど、そんな奴と一緒にあおいチャンが住むなんて嫌だ。おれのとこ来てよ」

「……みんなそれ言うね」

「あいつにいい印象はない。あおいチャンもでしょ? 金曜日もすごい嫌な笑み浮かべてたし。危ない気がするんだ」

「でもね、カオルくん悪い人じゃないんだよ?」

「何言ってるの。何されたか詳しくは知らないけど、嫌なことされたんでしょ」

「……でも、彼もいろいろ考えてることがあるんだって。『体育祭と文化祭の時は、いじめ過ぎちゃってごめんなさ~い』って、謝ってもらったよ?」

「……それ、謝ってないと思うんだけど」

「わたしはいいよって言ったからいいの。それに、彼もアイくんの付き人さんだから、わたしの家族でもあるし。ちゃんと仲良くなりたいんだ」


 葵の手が、アカネの頭にまわり、やさしく撫でてくる。


「心配してくれてありがとう、アカネくん」

「……っ、あおい、チャン」

「でもやっぱりわたしにとって一番はみんなのことだからね? みんながわたしにとっての家族で、帰ってくる場所だ」

「……うん。待ってる、から」


 アカネも、ぎゅっと葵を抱き締める。


「ありがとう。絶対帰ってくる。……アカネくん? わたしに踏み込んでくれて、ありがとう」

「……あおい、チャン……?」

「冷たいの、絶対治すからね? 運命だって変えてやるから。……わたしのこと。好きになってくれて、ありがと」

「っ、あおいチャン! そんなの、……お別れじゃないんでしょ!?」

「もちろん! わたしは諦めないよ! 最後まで! 絶対に帰ってくるからね! でも、帰ってきた時みんながいなかったら言えないから、今言っておきたかったんだ」