手をパンッと合わせる葵に、みんなの顔が一気に不安げに。
「え。アオイちゃん……?」
「……申し訳ありません、みんな」
葵は頭を下げ、みんなに謝った。
「……どういうことだよ」
「お休みする日にちが、決まったということです」
「……新歓には、出られないの? あーちゃん」
「はい。ごめんなさい、オウリくん。……お仕事、放り出してしまって」
「……葵、いつだ」
「ツバサくん……」
「いつから休むの? あおいチャン」
「……学校に来るのは、今週いっぱいまでです」
あまりにも急な話に、みんなが立ち上がる。
「み、皆さん落ち着いてください。あおいさん、頑張ってお家の方にもう少しいたいんだと粘っておられたんです」
レンの言葉に、みんなは一度ゆっくりと座り直す。
「でももう、学校も放課後にしかならないと来られないぐらい『体調が悪い』のです。それを家の方たちは大変心配されておられました。だから、早く治して早く帰ってこられるようにと、家の提案をあおいさんも呑んだんです」
「ね? あおいさん」と、同意を求めるようにレンの視線も葵に向けられる。
「はい。……とっても悲しいですが、でも早く帰ってきたいのも事実です。なので、急に決めてしまってごめんなさい。みんなにも、何の相談も無しに決めてごめんなさい」
「……ううん。あっちゃんがきちんと納得して決めたんなら、あたしたちは何も言わないよ? 早く帰ってきてね? 一緒にまた仕事しよ? 遊びにも行こ?」
「はい。絶対に帰ってきます。待っててくださいね」
それからいろいろと決まり、新歓のしおり作成に取り掛かった。ページ分担をし、葵は新歓三日間のスケジュール担当に。
「隣いいか? ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい。もちろんですよツバサくん」
そう言ってツバサは葵の横に腰掛け、葵が作成中の三日間スケジュールと、自分が作成するオリエンテーションのところを時間や時間の書き方等を合わせていた。
「……金曜日のさ」
小さくツバサが話し出す。恐らく聞こえるのは葵だけだ。
「お前が話せる範囲でいいから、あいつらのこと教えて欲しいんだけど」
「……そう、ですね」
葵は一度考え込むような仕草を見せる。
「アイくんは、道明寺の本当の子供です。彼は百合に通っていて、今は生徒会長をしています。カオルくんは、小さい頃から、アイくんのお友だちだったみたいで、ある製薬会社の息子さんでした。ひょんなことからアイくんの付き人になったらしいです。今は、副会長さんですね。……それぐらい、でしょうか」
「……そっか」
それからツバサは、また黙々と作業にとりかかる。
「何も、聞かないんですね」
「……聞きてえに決まってるだろ」
ちらりツバサを見てみると、握っているペンが今にも折れそうなほど手に力が入っていた。
「つ、ツバサくん。ペンが折れてしまいますよ」
「いや、どれぐらいやったら折れっかなって、ちょっと試してる」
「はい?」
でも折れなかったみたいで、ツバサは諦めてソファーに背を預けた。
「この間たくさんの命が亡くなったじゃん。一体お前は、どんだけの力であれをバキバキ折ったのかと思って」
「……別に、折りたくて折ったわけでは……」
「はは。まあそうだけどさ。……俺も、それぐらい強かったらお前のこと守れんのかなって。思ったんだよ」
そう言いながら、ツバサは葵の頬に手を伸ばし、指の背ですっと撫でる。
「…………ッ、ぶはっ!」
「……!!」
かなり大きな音で噴き出したので、みんながどうしたのかとこちらを向いている。



