かきかきかき……。
何をしているのだろうか。ヒナタが机に座って何かを書いていた。
「……もしかしてヒナタの奴、何かわかったことがあったのかもしれねえぞ」
「チカちゃん。さっきの話で何がわかるの? ヒナくんこそわかったらエスパーじゃん」
「……もしかしたら、葵のことについてまとめているのかもしれない」
「……図にまとめてみました的な?」
「あーちゃんのこと、今の時点でどこまでわかったのか、まとめてくれてるのかな??」
「でも、それっておれらが知ってるのバラバラだったりするでしょ? だったら結局まとめられるのって、この間あおいチャンが暴露してくれたやつと、今日のことぐらいしか……」
「……いや、あいつが今、必死になってることって一つしかないでしょ」
『ん? どういうこと??』と、キサに続いてみんなはヒナタが何を書いているのかを覗き込んだ。
┌ ┐
◇どうやったらあいつと話せるか◇
①永遠と付きまとう
②永遠と話しかける
③永遠と見つめる
④脅す
⑤くすぐる
⑥技をかけ
⑦物でつってみる
⑧脅す
⑨子供の写真をあげる(みんなの)
⑩小っちゃい頃の話をしてあげる
⑪チカの初キスの相手は実はフジカ婆
⑫ツバサは実は経験済み
⑬チカは実は小5までおねしょしてた
⑭チカは実は
└ ┘
「いい加減にしろっ! オレの黒歴史……! やめてっ……」
「今回ばっかりは、チカちゃんよりもヒナくんの方が可哀想だよ……」
「え。ちょ、待って……?! 嘘情報流れてるから一個!」
「翼は、絶対あると思ってた」
「いやアキ! 勘弁しろマジで!」
「ひなクン、『脅す』二個入ってるよ? ……よかった。おれじゃなくて」
「さ、さっすがひーくんだね? ……よかった。おれでもなくて」
キサは、一番可哀想なヒナタの肩を、ぽんと叩いてやる。
「あ。キサ、いいところに。一緒に考えてよ」
「やっぱりあんたが一番可哀想だわ……」
キサは、弟の頭をよしよしと撫でた。
「子供扱いしないでよ。チカじゃあるまいし」
「もうやめて! 途中まで書いてるやつ最後まで書こうとしないで……!!??」
チカゼにリストを取られ、ヒナタは拗ねた。
「ちょっと。一刻も早くあいつと話したいんだから、邪魔しないでよ」
「ヒナタ、ちょっと落ち着け? な?」
「チカの話であいつのこと釣るんだから」
「それだけはやらせねー……!!」
チカゼは、さっき書いたヒナタの作戦の紙をびりびりと破ってゴミ箱にポイした。まわりに書くものが何もなくなってしまったヒナタは、机にほっぺたを付けてぼうっとしている。
そんなヒナタに、みんな何も言えなくなってしまった。
「……いいよね、みんな」
寂しそうに突っ伏すヒナタは、ちいさくそう漏らした。
「ヒナくん……」
「あいつと話できるんだもん。……いいな」
切ない声に、胸がぎゅうっと苦しくなる。
「オレだって、あいつと思い出、作りたいのに……」
「ひー、くん……?」
「だってあいつ。もうすぐお休みするんでしょ……?」
「……ヒナタ」
チカゼが、泣きそうになりながら声を掛ける。
「オレは。……あいつがどんな家の奴だろうと、誰が本当の子供だろうと。あいつと。……話したいんだって」
「……」
「思い出。……作ってやってよ。あいつと。……たくさん話してやってよ」
「…………」
アキラが、ツバサが、言葉を掛けてやれない。
「ちゃんと。……泣かせてやってよ。笑わせてやってよ。……あいつの仮面以外の顔。……見させてよ」
「あんた……」
それから完全に突っ伏したヒナタは、顔を上げなかった。
でも、彼の体は少し震えていた。時々洟を啜る音が聞こえていた。



