すべてはあの花のために⑦


「それじゃあ、今回は春の交流会だったということで、次は夏ですかあ?」

「……そう、ですね。そのぐらいの時期に、またすることにしましょう」


 これは仕事だと。生徒会長としてアキラは必死に今後の予定を決めていく。


「あ。でも、あおいさんは、その時期はもう……」


 アイの言葉に、またみんなが反応する。


「……わたしはまだ、諦めてはいないので」


 葵が放った言葉は、とても小さかった。
 でも彼を…………彼らを睨むような視線は、どこか強い意志で溢れている。


「ふ~ん。あなたは、家の命令に背くんですかあ」

「どう思われようと、わたしは家の指示には従います。……それが、わたしの『考え』だから」

「ま、今日はもうお開きにしましょう? まだおられれば、あおいさんもしっかり交流会しましょうね?」


 葵は返事をしなかった。ただ、握った拳が震えていただけ。



「それじゃあ、あおいさん、帰りましょうか」

「……はい」


 そう言ってアイ、カオルに続き、レンと葵も会議室から出て行こうとする。


「っ、あーちゃん?!」

「あ、オウリくん。また月曜日に会いましょう」

「そういうことじゃないよアオイちゃん!」

「……すみません。今日は、彼らと一緒に帰ってくるように言われているので」

「あっちゃん。あたしたちパニックで、交流会どころじゃなかったんだけど……」

「すみませんキサちゃん。話が脱線しすぎでしたね。彼らも、もうこんなことはないと思いますので」

「違うよあおいチャン! おれらは、あおいチャンの口から聞きたくて」

「ごめんなさいアカネくん。これは、言えないことなんです」

「……言いたくないことじゃないの」

「なので、これについてはきちんとお話しできるかわからないんですけど、彼らが言ったことなら、もう一度お話しできるので」


 相変わらず、ヒナタのスルーは健在みたいだが。


「……アオイ」

「……すみません、チカくん」


 チカゼが、葵の腕を放さない。


「なんでなんだ。なんで、オレらに言ってくれねえんだよ」

「……わかって、ください」

「っ、あおいっ」

「わたしが言えないことは家のこと。……言ってしまえばもう。大事なみんなを、巻き込んでしまいます」

「そんなん関係ねえよ」

「みんなはそう思ってくれてるって、わたしもそう思ってます。……でも、わたしが嫌なんです。大切なんです、みんなが」


 葵はそっとチカゼの手に触れ、腕を解放してもらう。


「……わかった。今日じゃなくていい」

「ツバサくん……」


 扉の向こうで、三人が待っている。


「だから月曜日、ちゃんと話してくれ。お前が、話せるところまで」

「……話せるところまで、ですか」

「言えないか?」

「わたしは、今回彼らが言ったことも話せないんですが。それでも、ちゃんと話します。頑張りますね?」


 申し訳なさそうに葵が言うと、ツバサも苦しそうな顔になる。


「葵。月曜日、何時でもいい。俺らは待ってるから、ちゃんと、ここに来てくれ。お前のこと、教えてくれ」


 アキラがそう言うと、葵は扉に手を掛ける。


「……また、上手く言えないかもしれません」

「それでもいい。俺はお前を理解してやる」


 葵は扉を開け、部屋にいるみんなを振り返る。


「……はい。それでは、また月曜日に」


 そう言って、葵は部屋を出て帰って行った。