「わたしにも、あなたたちとは違う役目があるからに過ぎません。……さあ、交流会の続きをしましょう」
沈黙の訪れた会議室。それも束の間のことで、カオルとアイ、そしてレンが勝手に話を進めた。
「……そうですねえ。ぼくたちは、今は交流会に来ていたんでしたあ」
「でも、結構情報交換もできたんじゃないかな? こういうのって、定期的にしたらいいと思うんですよ」
「そうですね。季節ごと……でしょうか」
「それがよさそうですねえ」
「時期はいつでもいいんだけど、これからも桜の生徒会の人たちと生徒たちとは、親睦を深めていきたいなって思ってますよ」
「そう言っていただけてありがとうございます。大人たちも、生徒たちを見習って欲しいものですね」
淡々と勝手に決まっているのに、みんなはさっきのことがまだ整理できていない。
「あ。それはそうと、一番気にはなっていたんですが。どうしてそちらは生徒会は二名で構成を?」
でも、その話に葵も加わって、会話を進める。
「生徒会自体は二名ですが、各クラスの委員長を兼ねて、生徒会の仕事をしている人はいるんです」
「成績首席は生徒会長、次席は副会長。それ以降の三学年三クラスから、そのクラスで一番成績がよかった人を委員長及び生徒会補助として選ばれるんですう」
「あなた方の仕事は主に何を?」
「俺たちは、その方たちがまとめた案件等の確認、会計確認、人数確認など、主に確認の仕事ですね」
「今回、こういったことを提案したのは?」
「ああ。それはぼくが提案しましたぁ。こういった、頭の硬い人たちがしそうにないことをしておけば、何かしら有益になるかと思ってえ」
「というのは冗談で。……桜の文化祭に今回来させていただいて、このままの状態だと勿体ないと思ったからです」
「勿体ない?」
「はあい。ぼくは体育祭の様子もすこ~しだけ見させてもらったんですけど、とっても明るい学校だったので、何か秘訣があるのかな? と思ったんですう」
――――体育祭に来ていた。
アカネは一人、雰囲気を変えてカオルをちらり横目で見た。しかし相手は初めからわかっていたように、意地の悪い笑みを浮かべながら、その視線を真正面から受け止めていた。
「実際のところ、確執があるのは大人たちだけ。それに生徒たちが巻き込まれなくてもいいと思うんです。だから今回は、こういった提案で子供たちの方から少しずつ、確執を取り除けたらと思いまして」
「引き受けていただいて、ありがとうございます」と、アイ及びカオルが小さく頭を下げる。
でも、その横から見えた彼らの口元は、不気味に上がっていた。
時刻は18時過ぎ。
「桜の生徒会長さんは、今年も皇さんなんですね?」
「……今年『も』?」
アキラが怪訝な顔をしてアイのことを見遣る。
「違いました? 確か去年もされていたと……」
「いえ、そうですが、どうしてそれをご存じなのかと……」
アキラも、さっきから動揺が隠せない。
でも次の発言で、もっとパニックに。
「だってあおいさんの、元婚約者さんでしょう?」
「――なっ」
「違いますよ~アイさん。元婚約者候補さん、ですよ?」
笑顔のアイに加わり、同じく笑っているカオルが、そうハッキリと告げる。
完全に混乱してしまった桜を見て、彼らは愉しそうに笑っていた。
「あれ? 道明寺さん、ぼくたちのことをおっしゃっていなかったんですねえ。みなさんなんだか整理し切れていないようですよお」
葵に話が振られると、みんなは聞き漏らすまいと耳をそばだてるが、顔色はどこか悪い。
「……見て、話してくれた方が、みんなも理解してくれると思ったので」
「……どういうことだよ」
苛立ちがこもった声は、チカゼから聞こえてくる。
「言ったでしょう? わたしは言いたくないと。言えないんだと。彼らが代わりに言ったまでです」
「こんなこと、……信じられるかよ」
「信じるかどうかは任せます。でも、今は交流会。……話が脱線しすぎですよお二人とも。それにレンくんも」
葵がそう言うと、彼らは「すみません」と言葉にしてはいるが、悪いとは全く思っていないようだった。
「それじゃあ今日はもう遅いですし、お開きにしましょうか」
アイの言葉に、みんなも頷いた。だってもう、交流会どころではなくなったのだから。



