すべてはあの花のために⑦


「うちはSクラスだけではなく、全生徒の進路を理事長が決めてくれるんですぅ~」

「は? 全生徒……っすか?」

「はぁい。生徒の成績順に、理事長がいいところを掴んできてくれるんですう」

「それは、一つの道しかないってこと?」

「弱肉強食ってやつでして。そのおかげかうちの生徒は競争心が強くて、生徒全員ライバル視してますね。でもそれを選ぶ道ももちろんあるので、たった一つではありませんかねえ?」

「それは、……ちょっと寂しいですねえ」


 悲しそうに呟くアカネに、カオルはニヤリと笑うだけ。


「そういう特色があるので、そういう生徒が集まります。でも、彼らは逆にそういうのに燃えるんですよお」

「……それは、あなたたちもなんですか?」


 キサのその質問に、二人は『待っていました』と言わんばかりに口角を上げた。薄笑いに、みんなは寒気を感じる。


「ぼくと会長は、ちょーっと違う理由ですねえ~」

「そうだね? 俺らはあそこを首席、次席で卒業しなければいけないしねー」

「それは何故か、教えてくれませんか?」


 レンも同じくニヤリと口角を上げた。


「ぼくはお世話になっている家の」

「俺は大切な家と両親の」

「「――駒、ですからね~?」」


 どこかで聞いたような台詞に、みんなの視線が葵に集まった。


「でもでも、どおして道明寺さんは百合ではないのでしょう。それが不思議でなりません~」

「まあまあカオル。それは家の指示らしいから、俺らがどうこう言えないでしょう」

「それは確かに、私も少し疑問がありましたが」


 ニヤニヤと会話をする二人にレンも加わる。


「……ちょ、ちょっとさ、何を言ってるの……?」


 カナデの言葉に、同じように目を丸くしたみんなは次の言葉を待っているようだ。


「そっか~! ちゃんと自己紹介、していませんでしたねえ?」

「それじゃあ、改めてちゃんと(、、、、)しよっか?」


 そして、今まで以上に二人の、そしてレンの口角が上がった。


「ぼくは、アイさんの付き人の『日下部 薫(くさかべ かおる)』と言いますう。そしてそして」

「改めまして。俺の名前は『道明寺 藍(どうみょうじ あおい)』。道明寺家の、本当の子ども(、、、、、、)です」


 みんなは目を大きく見開いたまま、言葉を失っていた。


「それで? 道明寺さんは、なんで百合ではなく桜なんですう?」


 みんなを差し置いて、カオルが葵に異常なほど口角を上げながら尋ねる。葵は瞳を閉じ、何かを考えているようだ。みんなは、葵の次の言葉を固唾をのみながら見守っている。


「……わたしは……」


 葵はゆっくりと瞳を開く。


「あなた方の言う駒は、家のため、これから家を支える上で必要な駒だと。そういうことですよね」

「何を、言ってるんだ葵」
「はあい。その通りです」


 アキラの言葉に、カオルが被さる。


「家のこれからを背負い、家に期待されている人間だ」

「あおいチャ――」
「そう言っていただけてとっても光栄ですよあおいさん」


 アカネの言葉を、アイが遮った。


「……『わたし』も、あなたたちと同様、きちんと家に期待をされている人間の一人です」

「それでは何故桜に? 私も少し疑問でしたので、教えていただけると嬉しいのですが」


 レンが、葵にしかわからない程度に小さく嘲笑った。