「うちはSクラスだけではなく、全生徒の進路を理事長が決めてくれるんですぅ~」
「は? 全生徒……っすか?」
「はぁい。生徒の成績順に、理事長がいいところを掴んできてくれるんですう」
「それは、一つの道しかないってこと?」
「弱肉強食ってやつでして。そのおかげかうちの生徒は競争心が強くて、生徒全員ライバル視してますね。でもそれを選ぶ道ももちろんあるので、たった一つではありませんかねえ?」
「それは、……ちょっと寂しいですねえ」
悲しそうに呟くアカネに、カオルはニヤリと笑うだけ。
「そういう特色があるので、そういう生徒が集まります。でも、彼らは逆にそういうのに燃えるんですよお」
「……それは、あなたたちもなんですか?」
キサのその質問に、二人は『待っていました』と言わんばかりに口角を上げた。薄笑いに、みんなは寒気を感じる。
「ぼくと会長は、ちょーっと違う理由ですねえ~」
「そうだね? 俺らはあそこを首席、次席で卒業しなければいけないしねー」
「それは何故か、教えてくれませんか?」
レンも同じくニヤリと口角を上げた。
「ぼくはお世話になっている家の」
「俺は大切な家と両親の」
「「――駒、ですからね~?」」
どこかで聞いたような台詞に、みんなの視線が葵に集まった。
「でもでも、どおして道明寺さんは百合ではないのでしょう。それが不思議でなりません~」
「まあまあカオル。それは家の指示らしいから、俺らがどうこう言えないでしょう」
「それは確かに、私も少し疑問がありましたが」
ニヤニヤと会話をする二人にレンも加わる。
「……ちょ、ちょっとさ、何を言ってるの……?」
カナデの言葉に、同じように目を丸くしたみんなは次の言葉を待っているようだ。
「そっか~! ちゃんと自己紹介、していませんでしたねえ?」
「それじゃあ、改めてちゃんとしよっか?」
そして、今まで以上に二人の、そしてレンの口角が上がった。
「ぼくは、アイさんの付き人の『日下部 薫』と言いますう。そしてそして」
「改めまして。俺の名前は『道明寺 藍』。道明寺家の、本当の子どもです」
みんなは目を大きく見開いたまま、言葉を失っていた。
「それで? 道明寺さんは、なんで百合ではなく桜なんですう?」
みんなを差し置いて、カオルが葵に異常なほど口角を上げながら尋ねる。葵は瞳を閉じ、何かを考えているようだ。みんなは、葵の次の言葉を固唾をのみながら見守っている。
「……わたしは……」
葵はゆっくりと瞳を開く。
「あなた方の言う駒は、家のため、これから家を支える上で必要な駒だと。そういうことですよね」
「何を、言ってるんだ葵」
「はあい。その通りです」
アキラの言葉に、カオルが被さる。
「家のこれからを背負い、家に期待されている人間だ」
「あおいチャ――」
「そう言っていただけてとっても光栄ですよあおいさん」
アカネの言葉を、アイが遮った。
「……『わたし』も、あなたたちと同様、きちんと家に期待をされている人間の一人です」
「それでは何故桜に? 私も少し疑問でしたので、教えていただけると嬉しいのですが」
レンが、葵にしかわからない程度に小さく嘲笑った。



