そのあと、キサ、アカネ、オウリが回収し終わって帰ってきた。
「え。どうしたのこの状況……」
「え? 何でみんな、泣きそうな顔して震えてるの……?」
「絶対犯人はひーくんでしょ! ひーくん!! 覚悟ー!!」
飛び付いたオウリを四人が止めようとするものの、すんでの所で間に合わず。
「ぐはっ」
けれどヒナタは、あっけなくオウリにまたもやクロスチョップを食らわされ、ソファーごと引っ繰り返った。
「え? え?? ひーくん?? だいじょうぶ??」
「あ? え? オウリ? ……あーうん。大丈夫。目覚めた」
寝取ったんかいと。よくわからないまま、集計の確認をすることに……。
「……関西ぶらり旅、ね……」
決まったプランは、兵庫、大阪、京都を回る観光メインのぶらり旅。
「これって誰の案だっけー?」
「あいつの」
「そうなんだ! あっちゃん行けるといいね!」
「葵に一応連絡は入れておいてやろう。きっと喜ぶ」
でもその日、葵からの返事は返ってこなかった。
次の日も、その次の日も。葵と、それに付き添っているレンは学校に、毎日のように遅れて来た。
その遅れはどんどん酷くなり、昼を優に過ぎ、午後の授業の途中だったものが、交流会をする前までには最後のHRになってようやく顔を出せるような状況だった。
放課後の集まりには必ず参加している時の葵は至って普通で、みんなは、「大丈夫なのか」と。そんなことを聞くぐらいしかできないほど、完璧な『仮面』が葵を覆い隠していた。
そしてとうとう、百合との交流会が始まる。
4月下旬。時刻は17時を回ったところ。
「では、門でお待ちしておきます」
「行ってきますね」
葵とレンは生徒会室を出て、百合の生徒会の二人を迎えに行った。
「……何か最近さー。アオイちゃん月雪くんとばっかり一緒にいるよねー」
「圭撫、それはしょうがないだろう。俺も寂しい」
「秋蘭? それ全然納得してないよね?」
「まあ、それだけあおいチャンのことが大好きなんだよ~」
「アカネは寂しくねえのかよ」
「寂しいに決まってるじゃん! でも、ちかクンほどじゃないかなー?」
「はあ!? 何言って」
「まあチカ、あいつのこと好きで好きでしょうがないもんね」
「ヒナタ?! ……ひ、否定は。しねえけど」
「え。今ので照れたの? きっも」
「いや、普通に傷つくー……」
「ちーちゃんしっかり!」
「チカ。ただの八つ当たりだから。気にしないであげてくれ」
ここのところ、ヒナタも葵にしつこく付きまとうのはやめたみたい。代わりに、ずっと葵のことを睨んではいたけれど。
「(ほんと。心配なら言えばいいのに。不器用な弟)」
まあ今話しかけてもスルーされる確率が高いけどねと、兄は思った。



