「一応新歓の日程は決まってる。去年と同じで、GW開けの二泊三日だ」
「……そう、ですか」
「ん? どうしたの?」
「あーちゃん、何か都合悪い?」
「……実は、恐らくなんですが。それぐらいにお休みに入る予定なんです」
ヒナタの完全スルーなんかどうでもよくなってしまったみんなは、一斉に立ち上がる!
「葵! 何でそんな急に言うんだよ!」
「す、すみませんツバサくん。家の方の予定にも合わせないといけないもので……」
「早え! もっと遅らせろ! せめて新歓の思い出を作らせろ!」
「チカくん……。はい。ちょっと家と相談してみますね?」
「いやだいやだっ! あっちゃん。お休みなんてしないでよー……!」
「……ありがとうキサちゃん。でも、絶対よくなりますからね! 頑張ります!」
「そのまま帰ってこなかったりしてね」
「新歓の場所はどうやって決めますか?」
「いや、アオイちゃん。流石にその質問には答えて欲しかったんだけど……」
「去年は確かみんなで案を出して、新入生に選んでもらいましたよね」
「葵。帰ってくるんだろう? こっちに」
「もちろん! みんながいるまでに、頑張りますよー!」
ふんっ! と力こぶを作る葵の手を、そっとアカネが握る。
「あおいチャン……」
「……はい。なんですか? アカネくん」
「おれが。あっためてあげるね?」
「……っ、はい。ありがとう」
「あーちゃん。おれもー」
そしてオウリが、葵のもう片方の手を握った。
「冷たいのなくなったら、おれと付き合ってねー?」
「ははっ。それはどうでしょう?」
「じゃあオレと付き合ってー」
「絶対おれがあーちゃんの彼氏になる! いっぱいちゅーする!」
「ははっ。それは、そうなったら楽しそうですね?」
「じゃあオレもちゅーするー」
ヒナタが、葵の頬に手を伸ばす。
「あ。レンくんは、新歓の場所どうやって決めたらいいと思いますか?」
ひらりとそれを躱し、葵はレンの隣に座った。
行き場を失った手をじっと見つめているヒナタに、アカネとオウリは同情の視線を向けていた。
そんな彼もお構いなしに、その横でレンの服をくいくいと引っ張っている葵を見て、みんなは再び苛立っていたけれど。
「去年の案がいいと思いますよ? 今年は生徒会に1年生は選ばれなかったわけですし。彼らの意見を聞いている時間もないのだから、ある程度候補を絞ってそれで決めるのが妥当ではないかと」
「そうですよね! それじゃあ今年もメンバー内で企画をして、それを1年生に選んでもらいましょう」
そのあとは時間いっぱい、各自のプランを決める時間に充てた。
「ねえ、あんたはどこがいいの? オレはそこでいいよー」
「うーん。……九州、……関西。……中部もいいですね」
「うんいいね。あ、でも国内がいいんだね」
「あ。でも、わたしはもしかしたら行けないかもしれないから、海外という手もありでしょうか……」
「あんた海外行けないの? 何で?」
「いや、でもここはやっぱりわたしも行くと仮定して、希望もいっぱい入れることにしましょう!」
「そんなに行きたいとこがあるなら、オレがいつでも連れて行ってあげるよ。一緒に行こ?」
「行ったことないところがいっぱいですからね。迷います。……あ、そうだ。世間では『一人旅』っていうのもありますから、そういうプランも今度見てみて、自分で行ってみましょう」
「一人旅もいいけど、オレと行った方が楽しいよ」
「どこがいいですかね。行きたいところがいっぱいです」
「だからオレが――」



