すべてはあの花のために⑦


「一応新歓の日程は決まってる。去年と同じで、GW開けの二泊三日だ」

「……そう、ですか」

「ん? どうしたの?」

「あーちゃん、何か都合悪い?」

「……実は、恐らくなんですが。それぐらいにお休みに入る予定なんです」


 ヒナタの完全スルーなんかどうでもよくなってしまったみんなは、一斉に立ち上がる!


「葵! 何でそんな急に言うんだよ!」

「す、すみませんツバサくん。家の方の予定にも合わせないといけないもので……」

「早え! もっと遅らせろ! せめて新歓の思い出を作らせろ!」

「チカくん……。はい。ちょっと家と相談してみますね?」

「いやだいやだっ! あっちゃん。お休みなんてしないでよー……!」

「……ありがとうキサちゃん。でも、絶対よくなりますからね! 頑張ります!」

「そのまま帰ってこなかったりしてね」

「新歓の場所はどうやって決めますか?」

「いや、アオイちゃん。流石にその質問には答えて欲しかったんだけど……」

「去年は確かみんなで案を出して、新入生に選んでもらいましたよね」

「葵。帰ってくるんだろう? こっちに」

「もちろん! みんながいるまでに、頑張りますよー!」


 ふんっ! と力こぶを作る葵の手を、そっとアカネが握る。


「あおいチャン……」

「……はい。なんですか? アカネくん」

「おれが。あっためてあげるね?」

「……っ、はい。ありがとう」

「あーちゃん。おれもー」


 そしてオウリが、葵のもう片方の手を握った。


「冷たいのなくなったら、おれと付き合ってねー?」

「ははっ。それはどうでしょう?」

「じゃあオレと付き合ってー」

「絶対おれがあーちゃんの彼氏になる! いっぱいちゅーする!」

「ははっ。それは、そうなったら楽しそうですね?」

「じゃあオレもちゅーするー」


 ヒナタが、葵の頬に手を伸ばす。


「あ。レンくんは、新歓の場所どうやって決めたらいいと思いますか?」


 ひらりとそれを躱し、葵はレンの隣に座った。
 行き場を失った手をじっと見つめているヒナタに、アカネとオウリは同情の視線を向けていた。
 そんな彼もお構いなしに、その横でレンの服をくいくいと引っ張っている葵を見て、みんなは再び苛立っていたけれど。


「去年の案がいいと思いますよ? 今年は生徒会に1年生は選ばれなかったわけですし。彼らの意見を聞いている時間もないのだから、ある程度候補を絞ってそれで決めるのが妥当ではないかと」

「そうですよね! それじゃあ今年もメンバー内で企画をして、それを1年生に選んでもらいましょう」


 そのあとは時間いっぱい、各自のプランを決める時間に充てた。


「ねえ、あんたはどこがいいの? オレはそこでいいよー」

「うーん。……九州、……関西。……中部もいいですね」

「うんいいね。あ、でも国内がいいんだね」

「あ。でも、わたしはもしかしたら行けないかもしれないから、海外という手もありでしょうか……」

「あんた海外行けないの? 何で?」

「いや、でもここはやっぱりわたしも行くと仮定して、希望もいっぱい入れることにしましょう!」

「そんなに行きたいとこがあるなら、オレがいつでも連れて行ってあげるよ。一緒に行こ?」

「行ったことないところがいっぱいですからね。迷います。……あ、そうだ。世間では『一人旅』っていうのもありますから、そういうプランも今度見てみて、自分で行ってみましょう」

「一人旅もいいけど、オレと行った方が楽しいよ」

「どこがいいですかね。行きたいところがいっぱいです」

「だからオレが――」