すべてはあの花のために⑦


「……みんな、何やってんの」


 ヒナタは、みんなの首元を見ながら苛立たしげにもらした。


「……あんたも。何してくれてんだよ」

「っ」


 鋭い視線をヒナタに向けられて、葵はびくりと肩を揺らす。


「おいヒナタ」

「ちょっと黙ってて」


 ヒナタはチカゼを黙らせ、葵を上から見下ろす。


「あんたのせいで、みんなネクタイもリボンもなくなってんだけど。どうしてくれんの。あんたがみんなを守ってくれるのタンスから」

「……すみま」

「『すみません』『ごめんなさい』だけでね、済んだら警察なんていらないんだって、何回言えばわかるの」

「……っ」


 葵は俯くことしかできなかった。
 もう、彼の目を見ることが怖かった。


「……勝手にリボン、取られてんじゃねえよ」

「え……?」

「勝手に罪増やさないでくれる? あーめんどくさ」


 もしかしたら聞き間違いだったのかも。そう思っていたら、葵の手首に、ネクタイが結ばれていっていた。


「はい逮捕しまーす」

「え? ええ……!?」


 左に巻き付けていたネクタイは、最終的に両手を縛り上げて、葵の腕を持ち上げた。


「ひなたくん……!?」

「あんたの罪は、みんなの将来を台無しにしたことでーす。責任を持って、オレたちをタンスから守りなさーい」

「ええー!?」


 ぐいーっと引っ張られてどこかしらに連行されるのかと思ったら、すぐ止まった。ヒナタは、レンのことを見ていた。睨んでいた、と言った方が近いかもしれないけれど。
 そう思うが早いか、ヒナタはレンの胸にごつんと拳を当て、そのまま再び歩き出した。


「はい。容疑者逮捕しましたー」

「えー!? ちょ、待って! ヒナタくーん……!!」


 葵は、そのままどこかへ連行されてしまいましたとさ。
 こ、これで世界が平和に………………なる前に、話が終わってしまうんですけどっ?!