すべてはあの花のために⑦


「はい。みんな、ちょっと集合しましょう」


 キサが号令を掛けて、みんなを集める。


「ちょっと、また信人さんと近々話さないといけないみたいなんだけど、……秋蘭。信人さんは?」

「何でか知らないけど疲れ果ててた」

「え。ちょっとヒナくん! 何したの!」

「え。なんで矛先オレなの」

「そんなの! あの時一番に電話掛けてたからに決まってるでしょうがー! ひーくん覚悟!!」

「ぐはっ。……何でオウリ、オレにばっかり……」

「ひーくん見てるとイラッとするの!」

「え。ちょっと傷つく……」

「取り敢えず、シン兄には俺から今日の内に必ずこのことを話しておく」

「……あおいチャンに、何が起こってるんだろう……」

「信じるって言ったけどよ、こればっかりはちゃんと説明してもらわないと納得いかねえ」

「ああ、……オレもまだ、アオイに聞きてえことあるんだよ」

「そうだろうけども、みんな。明日のこと、忘れちゃいないだろうね?」


 そう。明日は魔のお披露目式が待っている。


「まさか三年連続地獄に遭うとは思わなかったけど。詳しくあっちゃんに話を聞かないといけませんが、明日は逃げないといけなくもあります。今日は、その作戦を練った方がいいのでは?」


 キサの意見に大賛成。みんなそれぞれ思うところはあるようだけれど、ひとまずは明日に備えたのだった。


 ❀ ❀ ❀


「ははっ。さっすがに今のは無理がありましたかね。……九条さんも、どうやら他のメンバーも疑ってるようですし」


 迎えに来た車の中。
 運転手は無言。隣で饒舌に、先程の彼が話しかけてくる。


「しかも、皆さんまだ信じてるんですね。……月雪なんてグループ、とっくの昔になくなってるのに」

「……」

「そっか。なくなったんじゃなかったですね。『吸収された(つぶされた)』の間違いでしたね」

「……」

「どうして私が、潰した家の、それも拾ってきた子供の世話なんかしないといけないんですか。ああ違いました、監視でした」

「……」

「ちゃんと仮面は着けておられるようですし? ……まあ彼らに手は出さないでおきましょう」

「……」

「まだ助かるなんて、そんなこと思ってるんですか? 相変わらず頭の中がお花畑のようで」

「……」

「……無視ですか。まあこれから四六時中、あなたの監視をしていきますから。精々頑張って、思い出でも何でも作ればいいんじゃないですか」


 やさしい頃の面影など、今はもうどこにもない。
 車の中では仮面を外したものの、葵はそのまま無表情で家まで帰ったのだった。