「はい。みんな、ちょっと集合しましょう」
キサが号令を掛けて、みんなを集める。
「ちょっと、また信人さんと近々話さないといけないみたいなんだけど、……秋蘭。信人さんは?」
「何でか知らないけど疲れ果ててた」
「え。ちょっとヒナくん! 何したの!」
「え。なんで矛先オレなの」
「そんなの! あの時一番に電話掛けてたからに決まってるでしょうがー! ひーくん覚悟!!」
「ぐはっ。……何でオウリ、オレにばっかり……」
「ひーくん見てるとイラッとするの!」
「え。ちょっと傷つく……」
「取り敢えず、シン兄には俺から今日の内に必ずこのことを話しておく」
「……あおいチャンに、何が起こってるんだろう……」
「信じるって言ったけどよ、こればっかりはちゃんと説明してもらわないと納得いかねえ」
「ああ、……オレもまだ、アオイに聞きてえことあるんだよ」
「そうだろうけども、みんな。明日のこと、忘れちゃいないだろうね?」
そう。明日は魔のお披露目式が待っている。
「まさか三年連続地獄に遭うとは思わなかったけど。詳しくあっちゃんに話を聞かないといけませんが、明日は逃げないといけなくもあります。今日は、その作戦を練った方がいいのでは?」
キサの意見に大賛成。みんなそれぞれ思うところはあるようだけれど、ひとまずは明日に備えたのだった。
❀ ❀ ❀
「ははっ。さっすがに今のは無理がありましたかね。……九条さんも、どうやら他のメンバーも疑ってるようですし」
迎えに来た車の中。
運転手は無言。隣で饒舌に、先程の彼が話しかけてくる。
「しかも、皆さんまだ信じてるんですね。……月雪なんてグループ、とっくの昔になくなってるのに」
「……」
「そっか。なくなったんじゃなかったですね。『吸収された』の間違いでしたね」
「……」
「どうして私が、潰した家の、それも拾ってきた子供の世話なんかしないといけないんですか。ああ違いました、監視でした」
「……」
「ちゃんと仮面は着けておられるようですし? ……まあ彼らに手は出さないでおきましょう」
「……」
「まだ助かるなんて、そんなこと思ってるんですか? 相変わらず頭の中がお花畑のようで」
「……」
「……無視ですか。まあこれから四六時中、あなたの監視をしていきますから。精々頑張って、思い出でも何でも作ればいいんじゃないですか」
やさしい頃の面影など、今はもうどこにもない。
車の中では仮面を外したものの、葵はそのまま無表情で家まで帰ったのだった。



