渋々とシントが答えると、ヒナタは表情は変えずに続けて尋ねた。
「たとえば? それだけじゃないですよね?」
「っ、……葵がどういう人物なのか、今まで何をしてきたのか。そんなのを全部知った上で、契約をするかと書かれた書類だよ」
それは、あくまで道明寺側から書かれた書類。俺は、そんな葵のそばにいてやりたいと思ったから契約をした。
その他には、俺の仕事内容だね。さっき言った仕分けのこと。その詳細が書いてあった。そこには特に期間は設けられていなかった。ただ、このことを漏らせば…………。
「ま、これ以上は想像に任せるよ。ただ、これだけは言っておく。俺の記憶が戻ってることがバレでもしたら、俺だけじゃなく、君らも皇も周りの人間も、確実に危険な状態になるからよく覚えておいて」
脅しとも取れそうなシントの話に、みんなの顔色が悪くなっていく。
「そうですか。わかりました。ま、このぐらいにしておいてあげます」
「それじゃあみんな、絶対にシントさんのことは内緒にしようね」と、さらっとヒナタは言ってのける。
「(……なんか、すっごい負けた気分)」
ヒナタと話したシントはゲッソリ。そんなシントを見て、みんなの頭の中に【トーマ<シント<ヒナタ】の図がまた出来上がった。
「まあそういうことだから、俺がここに帰ってきたことも外には漏らさないようにお願い。誰がどこで、何をしてるかわからないし、ましてやあそこの関係者がどこに潜んで、るか……(……――ッ!?)」
その時、すごく嫌な感じがして俯きかけていた顔を上げる。
「(……待って。俺、ぽんぽん話してるけど……)」
その『関係者』が、この中にいない保証なんて……。
「(…………っ、嫌な予感がする)」
案の定、その思い当たる人物をじっと見つめると、相手の目元が愉しげに弧を描いた。
「……!!!! ……っ」
もう、何もかも遅いかもしれない。だってもう、こんなにも話してしまった。
「(……信じるしか、ない)」
だって彼らはみんな、『理事長の選んだメンバー』なのだから。
「(……っ、あおい。お前、絶対わかってなかっただろう……?)」
バレていることも。何もかも。
絶対今頃、パニックに陥ってるに違いない。
「(葵。お前が大好きなみんなを、俺も信じるよ。……一番信頼してくれた証をもらったんだ。ちゃんと、俺は最後の仕事を熟すよ)」
シントは、ぐっと手に力を込める。
「(……大丈夫だ。信じろ。信じろ)」
それからシントは次の質問を受け付けた。



