「……はな」
あの日。あの時。あそこで君を見つけた自分の世界に、色がついた。
「……はなっ」
君の笑顔が見たかった。君に、笑って欲しかった。
「……は。なっ。……っ」
いつも、君に会うのが楽しみだった。
「……ぜったい。たすけるから」
毎日行った。君が来ない日だって。ずっと待ってた。
「はあ。……言うつもりなんて。なかったのに」
今日は何をしようかなって。また、泣いてるんだろうなって。
「……あの時。ハルナの言う通り、すぐに行けばよかった」
そうしたら君を。悲しませずに済んだのに。
「……見つけたんだ。今度はもう。離さない。……消えさせない」
たとえ、選ぶ相手が王子だとしても。
「……返事。聞きたくねー……」
たとえ自分が、君の太陽になれなくても。
「あー。……耐えられっかな。オレ」
静かに眠る姫へ、もう一度だけ内緒のキスをする。
「げ。……もう耐えらんないじゃん」
吸い込まれるように、口づけをしてしまう。
「あー。……だめなんだって。オレは、ただの影武者なんだって」
それでも。……触れた感触が、忘れられない。
「……今したのは、セーフだよね……」
そもそも、トリガーがこれかもわからないけど。
「……きっと。幸せになれるよ。ハナ」
綺麗な顔で眠っている彼女の頬を、やさしく撫でる。
「これは、犠牲でも何でもない。オレがしたくてやってること。ハナが好きでやってることだから」
髪をそっと撫で、最後にもう一度そこへ“愛”を落として立ち上がる。
「……思い出して欲しいけど、思い出さない方がいい」
だから自分は、……もう君にキスはしない。
「でももし、ハナの相手がレンじゃないなら……」
その相手が。……万が一にも自分なら。
「……ま、そうならないようにするし、オレなんかをまず選ぶことなんてないだろうけど」
その時は、……思い出させてあげるよ。何もかも。
「惚れ直させてあげるよ、オレのこと」
そうしたら何度だって、君にキスをしよう。
「……思い出したらさ。ちゃんと言うから」
丁寧に布団を掛け、保健室の入り口に歩き出す。まずは寝てるあいつを起こして、眠り姫を起こしてもらわないと。
「……オレ、持ってるからねー」
ふっと笑みをこぼしながら、ポケットから二枚のカードを取り出す。
「もしまた、オレが自分の気持ちを言うことがあるなら……」
最後にもう一度、月明かりに照らされる彼女を見て……。
「……ちゃんと、返事聞かせてね。あおい」
小さな笑顔を残して、保健室を後にした。
ヒナタがポケットから取り出したカードは、彼が引いた、そして女性用BOXに残っていた最後の一枚。そのカードは2枚とも、黄緑地に【リボン】の絵柄が描かれている。

『ようこそお越しくださいました』
表に書かれたカードを開いて合わせてみると――――。



