すべてはあの花のために⑦


「……はな」


 あの日。あの時。あそこで君を見つけた自分の世界に、色がついた。


「……はなっ」


 君の笑顔が見たかった。君に、笑って欲しかった。


「……は。なっ。……っ」


 いつも、君に会うのが楽しみだった。


「……ぜったい。たすけるから」


 毎日行った。君が来ない日だって。ずっと待ってた。


「はあ。……言うつもりなんて。なかったのに」


 今日は何をしようかなって。また、泣いてるんだろうなって。


「……あの時。ハルナの言う通り、すぐに行けばよかった」


 そうしたら君を。悲しませずに済んだのに。


「……見つけたんだ。今度はもう。離さない。……消えさせない」


 たとえ、選ぶ相手が王子だとしても。


「……返事。聞きたくねー……」


 たとえ自分が、君の太陽になれなくても。


「あー。……耐えられっかな。オレ」


 静かに眠る姫へ、もう一度だけ内緒のキスをする。


「げ。……もう耐えらんないじゃん」


 吸い込まれるように、口づけをしてしまう。


「あー。……だめなんだって。オレは、ただの影武者なんだって」


 それでも。……触れた感触が、忘れられない。


「……今したのは、セーフだよね……」


 そもそも、トリガーがこれかもわからないけど。


「……きっと。幸せになれるよ。ハナ」


 綺麗な顔で眠っている彼女の頬を、やさしく撫でる。


「これは、犠牲でも何でもない。オレがしたくてやってること。ハナが好きでやってることだから」


 髪をそっと撫で、最後にもう一度そこへ“愛”を落として立ち上がる。


「……思い出して欲しいけど、思い出さない方がいい」


 だから自分は、……もう君にキスはしない。


「でももし、ハナの相手がレンじゃないなら……」


 その相手が。……万が一にも自分なら。


「……ま、そうならないようにするし、オレなんかをまず選ぶことなんてないだろうけど」


 その時は、……思い出させてあげるよ。何もかも。


「惚れ直させてあげるよ、オレのこと」


 そうしたら何度だって、君にキスをしよう。


「……思い出したらさ。ちゃんと言うから」


 丁寧に布団を掛け、保健室の入り口に歩き出す。まずは寝てるあいつを起こして、眠り姫を起こしてもらわないと。


「……オレ、持ってる(、、、、)からねー」


 ふっと笑みをこぼしながら、ポケットから二枚のカードを取り出す。


「もしまた、オレが自分の気持ちを言うことがあるなら……」


 最後にもう一度、月明かりに照らされる彼女を見て……。


「……ちゃんと、返事聞かせてね。あおい」


 小さな笑顔を残して、保健室を後にした。





 ヒナタがポケットから取り出したカードは、彼が引いた、そして女性用BOXに残っていた最後の一枚。そのカードは2枚とも、黄緑地に【リボン】の絵柄が描かれている。



『ようこそお越しくださいました』


 表に書かれたカードを開いて合わせてみると――――。