やっぱり、そうだった。ルニは男の子で。アキラに見せてもらった中に写っていたのは、小さな頃の、彼の後ろ姿の写真で。
「……ひなたくんが。……るにちゃん?」
何となく、あの写真を見てから違和感はあった。
少し大きくなった、『彼にそっくりな男の子みたいな女の子』なら、たくさん写っていたから。でも、葵が『本当の彼』を見つけられたのはあの、後ろ姿の写真のみで。
それがどうしてなのかと尋ねる前に、シュッと何かを吹きかけられる。
気づいた時にはもう、ヒナタの腕の中で。体に、力が入らなかった。
「……。なに。したの……?」
「大丈夫。ハナは何も心配しなくていいよ」
そう言ってヒナタは葵を抱え上げ、英語教室を出て行く。
「……。ひなた。くん……」
「もう一人のハナが作った薬。ちょっとだけ使った」
「……! なんで。しってるの……」
「ん? オレがハナのことで、知らないことなんかないよ」
彼の体温が、温かかった。
やさしく運んでくれる振動が、心地よかった。
やさしく見下ろしてくれる彼の顔に、とくんと胸が鳴った。
彼が運んでくれたのは保健室。彼はちゃちゃっと鍵を開けて中に入っていた。……どこから手に入れたんだろうって。ちょっと疑問だったけど。
彼は、そっと葵をベッドに横たわらせようとする。
「……。ねないよ。わたし……」
なんとか体を起き上がらせ、ベッドの端に座っている彼にもたれ掛かる。
「……オレは、ハナには寝て欲しいんだけど」
やさしく頭を撫でてくるせいで、眠くなってくる。
「……おしえて。ひなたくん……」
「……何を?」
「このまま。ひなたくんのこと。……わるくおもうの。いやなの」
「ハナ……」
「おしえて。ひなたくん。……おし。えて」
「……聞いても忘れるよ? それでもいいの?」
必死に腕を動かして、申し訳なさそうなヒナタの服を、ぎゅっと掴む。
「……思い出した時。中途半端に君のこと。疑うことだけは。……したく。ないの……っ」
「……ありがとう」
頭に温かい感触が降ってきたけど、自力で頭を動かすことは、もう難しかった。
「……オレが、絶対にハナを助けてあげる」



