すべてはあの花のために⑦


 頭をぴりっとした痛みが襲ったのは、最初だけ。彼から来る甘い刺激のせいで、頭がぼんやりとしてくる。

 それでも思い出すのは、葵から抜け落ちたあの記憶。


「んっ。は……。……トリガー、だから……」


 一度離れたあと、何度も角度を変えてキスされる。

 ……苦しかった。息ができなくて。
 愛おしかった。彼の何もかもが。


「(……う、そ……)」


 思い出す記憶に、葵の頬にまた赤みが差すとともに。透明で綺麗な涙が溢れ出る。

 そんな葵に困ったように笑うヒナタは、目元にキスをたくさん落とした。


「……思い出した?」

「……。……っ」

「オレのこと、惚れ直した?」


 嬉しそうにそう言うヒナタに、葵は緩く首を振る。


「……ほれ。なおす。とか。……も。もっと。すきには。なった、けど……」

「――! ……あー。だめ。もう無理」

「ええ……!? んっ。はあっ。……ちょ、ひなっ……」

「今は黙って」


 熱っぽい低い声を最後に。
 葵は彼から与えられる愛に、しばらくの間身を任せた。