すべてはあの花のために⑦


「……もういい? あおいは、オレのこと本当に好き?」

「……。うん。すき」

「オレ、いい奴じゃないよ? オレのこと知ったら、きっと嫌いになるよ」

「……ならない」

「本当に? ミズカさん以上のストーカーでも?」

「……。でも。たすけてくれた。いい、すとーかーさん」

「それもそれでどうかと思うけど……」


 小さく笑ったヒナタは、一気に距離を詰めてくる。


「……!! ひ。ひな。……っ」


 ほんの少しでも動けば、もう、触れ合ってしまう。
 胸が。心が。震えてとまらない。


「……こうやったら、前唸ってたね」

「……。んん……」

「そうそう。……なんで? オレ嫌われてるんだと思ってた」

「……もう。すき。だったから……」

「え」

「……でも。きみを。守らないとって。おもって……」

「…………」

「いや。だった。……ひなたくんに。消えて。ほしくなくて……」

「……オレに、話しちゃうかもって思った?」

「……。うん」


 酷いことをしてしまった自覚はある。
 ……でも。絶対に守りたかったんだ。


「……――あおい」

「んんっ……」


 小さな声で名前が呼ばれたかと思ったら、ヒナタは葵の唇に、触れるだけのキスをした。

 それだけでもう。おかしくなりそうだった。
 あばれるんだ。こころも。からだも。何もかもが。


「……まだ、大丈夫だと思うけど……」


 どういうことだろうと、頑張って薄く目を開いてみる。彼の表情は、なんだかとても嬉しそうで。何度も啄むようなキスを落としてきた。


「多分、ビックリするよ」

「……。っ、ん……」


 ふれられるたびに。すきってきもちが。どんどんおおきくなっていく。


「惚れ直すかもよ」


 惚れ直すも何も。君に落ちてからはもう。ずっと惚れっぱなしなんですけど。


「ん……っ」


 そう思っていると、何故か頭が少し痛くなってきた。


「きたかな」


 ヒナタは様子を窺うように、少しだけ葵から離れる。


「……な。に……っ?」

「……大丈夫。怖くないよ」


 そしてまた葵の頬に手を伸ばして、今度は少し長く口づけてくる。


「……。んっ。……。は……っ」

「もう、思い出していいよ。……ううん。思い出して欲しい」

「ひなっ。……んっ」


 葵の言葉を飲み込むように、深く。……深く、口づけてくる。